「あの時の栄光を覚えている」早実の女房役が語る、苦悩の斎藤佑樹への思い

「お前、何やってるんだ」から猛特訓…甲子園決勝で止めたワンバウンド

「結構、敵対的な発言でしたね。『お前、何やってるんだ』っていう雰囲気でした。今でもあの時の顔をはっきり覚えています。『きついな』という感じでした」

 それから、白川さんはキャッチングの猛特訓を始める。「下手くそでしたから」と笑うが、ピッチングマシーンのボールを身体で受け止め、全身はアザだらけになった。

「原因は僕。僕が変わらないと何も変わらないですから、文句を言わずに練習を続けました」。当時を振り返る白川さんの表情には、斎藤に対する不満は微塵も感じられない。

「とにかく、がむしゃらにやっていました」と、当時の心境を語る。ひたすら練習を続け、自身が思い描いていた早実のエースとしてではなく、捕手として3年春、夏と続けて憧れの甲子園の舞台に立った。

 世紀の一戦となった駒大苫小牧との決勝。1-1の同点で迎えた延長11回表、1死満塁で駒大苫小牧はスクイズを仕掛け、これを察知した斎藤はスライダーを地面に叩きつけた。ボールはバットに当たらず、白川さんはワンバウンドしたボールを体で受け止め、飛び出した三塁走者をアウトに仕留めた。斎藤は白川さんへの信頼があったからこそ、絶体絶命の場面でも低めに投げることができた。

 このまま1-1で延長15回を終了。翌日の再試合を4-3で勝利し、早実初となる甲子園優勝に輝いた。

「辛いこともたくさんあったけれど、甲子園の優勝でかき消されました。本当にいい思い出しか残っていません」

 激闘を制して勝ち取った優勝は、どんな辛い思いにも勝る経験だった。しかし、一方で優勝から10年以上が経った今、当時の記憶が遠のいているとも感じている。

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