「どっちが打てるんだ?」 DeNA“84番目の男”を生んだドラフト席上の一言
ドラ9佐野がプロ1号、大卒一塁手を“最下位指名”に踏み切った理由とは
一芸の“最下位指名”から成り上がる。DeNAのドラフト9位ルーキー・佐野恵太内野手が17日、練習試合・ヤクルト戦(浦添)で“プロ1号”を放った。ラミレス監督が期待する育成2年目・網谷圭将、ドラフト5位ルーキー・細川成也に続き、「第3の新星」が出現した。
2点を追う8回。背番号44は同じくルーキーのヤクルト・菊沢のボールを強振。沖縄の雨を切り裂く打球は失速することなく、左翼席に突き刺さった。ルーキーらしからぬ逆方向への一発。球場がどよめきに包まれる中、驚異のパワーを見せつけた22歳は悠然とダイヤモンドを一周した。
“84番目の男”だった。広陵高から明大に進学。名門の4番に座り、リーグ戦6本塁打を放った。ただ、守備の主戦場は一塁だった。プロとしては外国人や4番クラスが務めるポジション。実際にDeNAでは守備の名手としても知られる主砲・ロペスの不動の位置である。それでも、指名を選択した裏には、ドラフト会議の席上での“一芸指名”があった。
昨年10月20日のドラフト会議。2時間が経過し、すでに指名を終えて退席する球団が続く中、8人を指名していたDeNAはもう一人、野手を指名する方針を取った。この時、同じ大学生で指名を検討している内野手がいた。一塁を中心に守っていた佐野と比べたら、総合的には使い勝手がいいとの見方は強かった。
果たして、どちらを指名するのか――。一芸に賭けたのは高田GMだった。席上で「どっちの方が打てるんだ?」とスカウトに聞いた。すると、「佐野です」と声が返ってきたという。9位指名に「佐野恵太」の名前が記された。