入団3年連続60登板、中日26歳右腕が秘める野望「自分はやらなければいけない」
「夢を叶える場所であり、諦める場所」―、13年ドラフト2位指名で「恩返しができた」
入団前に独立リーグの給料が低いことは知っていたが、「どこまでもらえないのか、正直認識が甘い部分があった」と振り返る。プロ野球選手は、子供たちに夢を与える憧れの存在であると同時に、生計を立てるための職業でもある。そんな現実的でシビアな側面も、独立リーグを経たからこそ学べたことだ。低い給料を補うため、バイトをするにしても時間は限られる。そんな時に知ったのが、成績上位者に与えられる賞金の存在だった。
「成績を残せば賞金がもらえるチャンスがあるって知った時、その賞金を取るためにはどうしたらいいかを考え出した。やっぱりはじめは、自分の中でもお金を稼ぐために野球をするっていうのは、すごく違和感がありました。でも、自分が結果を出して、結果に見合った評価をしてもらうのは当然。逆に、結果が出せずにお金も稼げなかったら、いつでもクビになる危機感もありました。自分が香川入りしたことで、選手枠を空けるために他の選手が切られていくのも目の前で見てきたので。
結果が出ないと明暗が分かれる。これで終わっちゃいけないっていうのは常にありましたし、やっぱり一番になりたい。一番になれば一番目立つし、プロのドラフトに掛かる率も高くなるわけですから」
ハングリーに1年を過ごした結果、24試合に登板し、13勝4敗、防御率1.64の好成績を残した。2013年ドラフトでは中日が2位指名。それまで独立リーグ出身者の最高位4位を2つ上回った。自分の成績が評価されて掴んだ上位ドラフトだが、その裏では「西田監督や球団の方々が、NPBのスカウトの方にいろいろ声を掛けて下さった」。花形でプロ野球入りを果たしたら知り得なかったであろう「どれだけ周りの人が売り込みに力を尽くしてくれたのか」を目の当たりにしていただけに、ドラフト2位の知らせを受けた時、まず浮かんだのは「恩返しができた」という思いだった。
「『また一つ道が拓けた』って言ってくれた時、よかったなと思いましたね。今年は大学や社会人に進まず、高校から独立リーグに入った子がいますよね(伊藤翔)。彼がまたプロに入ることになれば、また広がる。独立リーグは、経営者の方も言っているように、夢を叶える場所でもあり、諦める場所でもある。中途半端にやるんだったら辞めなさいっていうカラーがある。それを経験できたことは大きかったですね」