入団3年連続60登板、中日26歳右腕が秘める野望「自分はやらなければいけない」
3年連続60試合以上登板も「この3年間はずっと悔しい思いを持っている」
香川で得たハングリーさは、舞台がNPBに変わっても色褪せることはない。2014年にプロ入りしてから3年連続で1軍で60試合以上の登板を続け、通算防御率は2.76、WHIP(1回あたりに与える四球数+安打数)は1.15と安定した数字をキープ。15年春には侍ジャパンに選ばれ、欧州代表と戦ったが、自己評価は実に厳しい。
「1年を通じて1軍に居続けたことがないので、この3年間はずっと悔しい思いを持っています。使ってもらっている、という感覚。まだ納得していないし、するつもりもないです。今年は1軍に1年間居続けて自分の居場所を作る。まだ第一段階のそれができてないのだから、先の成長はない。そこは自分で切り拓くしかないですよね。アピールするにしても『自分はできるんだ、やらなければいけない』って気持ちをどれだけ持ち続けられるか。春が来たら、もう一度ゼロからの勝負。そうじゃないと自分は成長しないと思っているんで
侍ジャパンに選ばれたのも過去の話。もし代表だったと言うのであれば、WBC本戦のメンバーに選ばれていれば、のこと。選ばれたことは光栄ですけど、自分の自信にはならなかった。WBCメンバーに入れなかったということは、周りの選手を上回る評価をもらえなかったから。逆に自分のレベルの低さを知りましたし、2020年の五輪もありますから、もっとよくなって呼んでもらえるようになろうと思っています」
「自分でハードルを上げておかないと」と話す右腕は、今年の春、先発にも挑戦している。自分の可能性に自分で限界は作らない。「どれだけ稼ぐんだ、有名になるんだ、活躍するんだ」という気持ちを持って、野球、そして自分自身と向き合う。
「独立リーグ出身のバッター=角中(勝也)さんで定着している。だから、自分は独立リーグ出身のピッチャーとして定着する存在になりたいです。そこまで成り上がらないと、何のために野球をやっているのか。独立リーグを出た以上、その経歴は引退するまで付いてくることだし、その責任と自覚はあります。だから、転ぼうがつまずこうが、もっともっと(上に)というのは止まらないと思いますね」
プロ入り4年目、26歳右腕・又吉克樹の成り上がりストーリーは、まだまだ始まったばかりだ。
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佐藤直子●文 text by Naoko Sato