復活へもがく松坂大輔、中学時代の恩師が秘める思い「悪くていい」
教え子へ送る短いエール
大枝さんはシニア日本代表の監督も務めていた。代表に選ばれている選手の多くが横浜高へ進学を決めていたが、ピッチャーがいなかった。そこで、大枝さんは松坂を横浜高に行かせれば、横浜高は必ず強くなると考えたという。
大枝さんは、横浜高に特別な思いがある。自身が高校3年の時、茨城県の江戸川学園取手高校1期生として1980年の夏の甲子園に出場、愛甲猛(ロッテ-中日)擁する横浜高に敗れ、2回戦で敗退した。
「この年、横浜高は決勝で荒木大輔(ヤクルト-横浜)擁する早実に勝ち、夏の甲子園初優勝を果たしました。この歳に生まれたのが松坂です。『大輔』は荒木大輔の『大輔』からつけられました。これも何かの縁ですね。この歳に生まれ、僕が育てた松坂が、横浜高を優勝に導いた。『敵討ちができたかな』と思います」
そんな松坂は西武での活躍を経てメジャーリーグへ移籍。レッドソックスではワールドシリーズ制覇も経験した。8年の米国生活を経て2015年に日本球界に復帰。昨シーズン終盤の楽天戦で、中継ぎとして復帰後初の登板を果たすが、1回3安打、4四死球、5失点(自責2)と散々な結果に終わった。
大枝さんは苦しむ当時の教え子に「悪くていい。いい時と悪い時の両方を経験し、次の世代に教えればいい」とエールを送る。
「彼ももう大人です。彼には彼の考えがある。今は『頑張れよ』とだけ、声をかけてあげたいですね」
大枝さんは、今シーズンに復活を期すかつての教え子を、温かい目で見守っている。
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篠崎有理枝●文 text by Yurie Shinozaki