「自分達が元気でいれば」 仙台育英、選抜に挑む「6年目の春」に伝えたい事

同校1年生3人が亡くなった悲劇の事故…選抜初戦の22日は月命日

 佐々木監督は3月11日の試合後、石巻市に向かい、震災の津波で亡くなった教え子に「センバツに行ってくるね」と報告した。それぞれに3月11日への思いがある。誰にとっても特別な日だろう。

 13日の早朝、仙台育英ナインはセンバツ大会に向けて出発した。西巻賢二主将は多数の保護者や残留する部員を前に決意を新たにした。

「朝早くにお集まりいただき、ありがとうございます。いよいよ、大阪に出発します。これまで苦しいことも乗り越え、いろんなことを学んだり、みんなでやってきたりし、今日の出発になりました。まだ、向こうに行っても時間があるので詰めていけるところは詰めていき、不安を少しでもなくして初戦を迎えたいと思います。ベンチに入っている選手だけではなく、ここにいるみんなの心を一つにして、指導者、選手、保護者の方々の力を1つにして戦い、甲子園では優勝して、宮城に優勝旗を持ってきたいと思います」

 多賀城市のグラウンドを出発すると、仙台空港に向かう途中であるところに寄った。今から12年前の2005年5月22日、飲酒運転で暴走したRV車がウォークラリー中の同校1年生の列に突っ込み、3人が死亡した。その事故現場だ。福井工大福井との試合は、大会が順調に進めば22日。月命日にあたる22日ということで、学校近くの事故現場で献花をした。

 3月11日と、この日で命について考えた仙台育英ナイン。昨秋のレギュラー組がレベルアップしているのはもちろん、控え組が成長した姿を見せ、結果も出した。そんな中、佐々木監督は「謙虚じゃなくなっている」とナインの気持ちを引き締めた場面もあった。怪我人もおり、チームとしてはまだ万全ではない。それは選手たちが一番よくわかっている。目の前の結果にとらわれず、最高の成果を出すため、さまざまな思いを胸に本番までチーム力を高めていくつもりだ。

【了】

高橋昌江●文 text by Masae Takahashi

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