屈指のライバル関係は続く―大阪桐蔭、履正社の”大阪決戦”から見えたもの
履正社にとってこの敗戦がどちらに傾くのか
履正社は岡田龍生監督が86年に監督に就任して1からチームを作り上げ、97年夏に甲子園初出場。06年にはセンバツに初出場を果たし、11年から4年連続でセンバツに出場するなど、大阪を代表する強豪校になった。履正社は下宿している遠方の選手を除けば、ほぼ全員が自宅通学。だが、今回の選手たちの体の大きさを見ても分かるように、徹底的な栄養管理のもと強じんな肉体を作り上げている。栄養士を招き、保護者が栄養学を学んで各家庭で栄養バランスを考えた食事を摂っている。フィジカル面を徹底的にチェックし、体重の変動なども管理。チームの伝統でもある堅守と小技のもと、堅実な野球が身上だが、近年はそのパワーで打撃力もアップ。通学時間や決められた下校時間があり、平日授業時は毎朝小テストに臨むなど練習時間にはどうしても制約がある。それでも、実戦形式の練習メニューを多くするなど今置かれた状況の中で工夫を重ねてここまで来た。
昨夏は寺島成輝(ヤクルト)、山口裕次郎(JR東日本)と2本柱を擁して、甲子園の2回戦で優勝候補の横浜に勝ち、ベスト16に進出。今春のセンバツでは初戦で日大三を破るなど、全国区の地位を築き上げている。昨秋は岩手国体だけでなく神宮大会優勝と全国大会のタイトルも得て、着実に実績を積み上げていた。だからこそ、このセンバツでは頂点に立つことにこだわりを持っていた。
センバツ決勝戦後、ベンチ前で涙に暮れる選手もいたが、その中で最終回まで粘り切れずに呆然としていたエースの竹田祐の姿が印象的だった。決して本調子ではなかったエースが我慢、我慢のもとマウンドに立ち続けたが、最後は力尽きた。秋からチームとして課題だった守備力は間違いなく向上していたが、履正社にとってこの敗戦がどちらに傾くのか――。今後の取り組みに“変革”はあるのだろうか。
大阪桐蔭は厳しい戦いになるほど、“粘り”を存分に発揮する。履正社の若林将平主将も「自分たちも最後まで粘ったけれど、相手の方が上でした」と振り返った。
夏の甲子園にはどちらか、もしくはどちらも出場できないかもしれない。「桐蔭さんだけではなく、上宮太子さんや浪商さんなど、公立高校でも力のある学校は大阪にはたくさんあります」。履正社の岡田龍生監督が大会後に口にした言葉に、今夏の大阪大会のさらなる激戦を感じる。今週末に開幕する春季大阪大会。そして夏の府大会で各校が火花を散らす中、両校の意地と粘りがどう交錯していくのか。今年の大阪の高校野球の注目ポイントは尽きない。
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沢井史●文 text by Fumi Sawai