前田健太、平田良介、辻内崇伸…名手たちが繰り広げた大阪・新旧覇者の死闘

第2戦で先発したPL学園の前田健太

PL学園  104 210 131 |13
大阪桐蔭 002 004 001 |7

 PL学園は、前日15回を投げ抜いたエース中村圭をマウンドに上げず、1年生の前田健太に勝負を託す。4か月前に高校生になったばかりの前田は、先輩中村の「お前が全部投げろ」という言葉を肝に銘じて大阪桐蔭打線に立ち向かった。

 大阪桐蔭は3年生エース岩田雄大を温存していた。しかしPL学園は3回、3番神戸宏基が右中間に流し打ちで3ランを打つなど、徹底的な流し打ち戦法で岩田を攻略した。

 守っては前田が点を失いながらも内角を強気に攻めて完投。大阪桐蔭打線を振り切った。特に大阪桐蔭の4番、超高校級と言われた2年生の平田良介を1安打1打点に抑えたのが大きかった。

 PL学園はこの死闘の疲れがあったか甲子園では1回戦で日大三高に敗退する。以後も2006年、2009年に甲子園に出場している。

 一方、大阪桐蔭はこの戦いの後、2017年春までに13回甲子園に出場。夏3回、春2回、甲子園で優勝している。

 歴史に残る大阪府大会の引き分け再試合を戦った球児の内、大阪桐蔭の1年生投手、辻内崇伸は巨人に1位指名されるがすでに引退。2年生のスラッガー平田良介は、中日の主軸打者として今年のWBCで侍ジャパンに選ばれた。またPL学園の1年生エース前田健太は広島を経て、ロサンゼルス・ドジャースで活躍している。

 まだ「歴史」というには新しすぎる名勝負だが、大阪の覇権はこういう形で移行した。そして今春、大阪桐蔭と履正社という大阪府の高校同士で「頂上決戦」が行われた。全国屈指の野球王国大阪府では、濃密なドラマが今も繰り広げられているのだ。

【了】

広尾晃●文 text by Koh Hiroo

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