イチローを特徴付ける2つの記録 長距離打者が重用されるMLBで光る個性
イチローが内野安打を狙って打った説を裏付けるデータとは…
さらにイチローの個性が際立つ記録を紹介しよう。内野安打の記録だ。単打の中でも外野に飛ばない内野安打は、打ち損ねた打球を野手が処理できなかったように見なされることが多い。しかし、イチローは「狙って内野安打を打っている」と発言したことがある。俊足で、バットコントロールが抜群なイチローにとって、内野安打は安打、打率を稼ぐ武器だったようだ。
それを表す数字がある。安打が飛んだ場所を記録し始めたのは1980年代からなので、タイ・カッブやピート・ローズの記録は残っていないが、3000安打以上を記録した選手の内野安打数を見ると、上位5人は次のようになる。
○通算内野安打数
1イチロー 701
2クレイグ・ビジオ 627
3デレク・ジーター 507
4ポール・モリター 391
5アレックス・ロドリゲス 342
イチローは記録が残る選手の中では最多の内野安打を打っている。イチローの内野安打は全安打数の約23%にも上る。イチローが内野安打を狙って打っていたという説を裏付ける数字ではないだろうか。短距離打者でありながら、スラッガーたちに負けない実績を作った事実は素晴らしい。
タイ・カッブは、「50cm先に転がしたヒットと、50m先に飛ばしたヒット。この両方が同じヒット1本として扱われることは、野球のルールの最も素晴らしい部分である」と述べているが、イチローはまさにそれを体現する存在だと言えよう。
【了】
広尾晃●文 text by Koh Hiroo