近鉄、阪神でプレーした指揮官も一目置く打撃 名門・天理の小さな強打者

「この夏は自分たちが必ず行かないと。もう負けたくないんです」

 昨夏の県大会ではその智弁学園と決勝戦で激突した。センバツでは抜群の安定感を見せたエース・村上頌樹を前に、9回に1点差まで追い詰めるも4-5で惜敗。だが、さらに悔しかったのは自身が5打数無安打だったことだ。

 新チームからは不動の4番になった。1番とは役目が変わり、今度は走者をいかに還すか。チャンスの場面を想定し、勝負強さを磨いていくつもりだった。だが、秋は初戦で奈良大付に2-5で敗れ、“長い冬”を迎えることになる。旧チームのレギュラーが6人も残り、秋は期待度が高かっただけに、実にダメージのある敗戦となった。

「冬が長くなったぶん、もう夏の甲子園だけを見て、じっくり見直していこうと思いました。自分はもともと相手投手の投球で自分の形を崩されることが多かったので、どんな球でも自分の形でいかに打てるかが課題でした。だから。フォームをしっかり見直していこうと思いました」

 体のバランスを見ながら筋力トレーニングにも時間をかけた。スイング力をつけるために、1日1000スイング前後した日も多かった。その積み重ねで理想のスイングが徐々に確立できるようになった。「今日のあの三塁打は、まさに自分の理想の形です。今日の当たりは右方向でしたけれど、もっと左方向にも打てたら最高ですね」と笑顔をはじけさせた。

 チームとしての目下の目標は、もちろん夏の甲子園出場だ。「自分が主力になってから、ずっと智弁学園が甲子園に行っているので、この夏は自分たちが必ず行かないと。もう負けたくないんです」と語気を強める。3月には多くの選抜出場校と練習試合も行った。でも自分の打撃も決して負けていなかったと自負している。チームには神野と同じくプロも注目する5番・安原健人や2年生ながらパンチ力のある3番の太田椋など打の役者も揃っている。

 この夏は絶対に誰にも負けない――。そのためにこの春も最後まで県大会を戦う覚悟だ。

「春はまず県の頂点に立ちたい。その流れで夏も必ず甲子園に行きたいんです」

 2年ぶりに大舞台に戻り、今夏はあの景色をゆっくりと眺めてみたい。

【了】

沢井史●文 text by Fumi Sawai

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