覚醒のソフトB上林、伝説“170M弾” 高校からずば抜けていた「飛ばす力」
高校時代に最も飛んだ部室直撃弾、推定飛距離は170メートル!?
仙台育英OBで秀光中軟式野球部の須江航監督も「上林がバッティング練習をしている時はいつも飛んできていて、危ないなって言っていましたね。うちが練習していると、『お!? 来た、来た、来た!』って。ここまで飛ばなくても、道路にはよく打球が落ちていて、佐々木先生(監督)には何かあったら危ないですよと言っていたんですよ」と証言する。
一体、何メートル飛ばしていたのか。須江監督が「測ってみましょう」とメジャーを出し、計測してくれた。その結果、最も飛んだ、部室直撃弾は驚くことに160メートルを優に超えていた。信じがたいが、地図上でも確認してみると170メートル近い飛距離が計算された。
打撃練習中に軽く振ったバットで捉えた打球の飛距離もすごいが、試合では印象的なホームランを重ねてきた。2年秋には、岐阜国体準決勝の最終打席で本塁打を放つと、東北大会でも勝負どころで2試合連続本塁打、明治神宮大会では満塁でアーチをかけた。
3年春にはこんなこともあった。センバツ大会前、仙台育英は沖縄で合宿を行い、糸満と練習試合をした。この時、上林は本塁打を放っているが、糸満の上原忠監督(現沖縄水産監督)や選手たちも思わず拍手を送る打球だった。「相手チームからもそう思われるのはすごいなと思った。カウント3-2から粘った後だったし、バックスクリーンを越えていくのはあり得ないからね」と、佐々木監督も驚くしかなかった。相手の上原監督も「見たことがない。150メートルはいっている」と目を丸くしていたという。
夏の宮城大会決勝でも勝負強さを発揮した。初回に5点を失うという苦しい展開だったが、2点を追う8回、上林はKスタ宮城(現Koboパーク宮城)の右翼席に1点差に迫るソロ本塁打を放った。9回に押し出し四球でサヨナラ勝ちを収めるが、チームメイトに勇気を与えて士気を高めた、大逆転劇を演出する一発だった。
高校時代から悪い結果を気にする節はあるが、どんなにいい結果が出ても、浮ついたことはない。常に地に足がついている。佐々木監督はこう話す。
「上林は元々、すごいんだけどね。高校に入ってきた時からボールの待ち方、見逃し方がよく、センター中心にライナー性の当たりが多かった。ルーティンもしっかりしていて、それは今も変わっていないね(笑)。そして、謙虚だから、1年生から試合で使っても周りから文句は出なかった。上林の学年は東日本大震災直後に遅れて入学式が行われ、ゴールデンウィーク明けからプレハブ教室で高校生活が始まったけど、そんな状況でも上林だけは淡々としていて偉いなと思ったね。周りに左右されないから大人だなと見えた」