光る強肩捕手・甲斐の貢献度 ソフトBの「弱みを消す」という戦力アップ

攻撃力でも総貢献がプラスに転換したソフトバンクの捕手陣
攻撃力でも総貢献がプラスに転換したソフトバンクの捕手陣

攻撃でも力を発揮しつつあるソフトバンク捕手陣

 ソフトバンクの捕手陣は、許盗塁以外にも攻撃力において問題を抱えてきた。他のポジションに強打者を多く擁するため表面化してこなかったが、捕手のバッティングは他球団に対してかなり後れを取っていた。同じ打席数をリーグの平均レベルの捕手が代わって立った際に残すと推定される成績に基づく貢献を0としたとき、2015年のソフトバンクの捕手陣(高谷、鶴岡、細川亨など)が果たした貢献は得点換算で-17.1点と推定された。

 この弱点は昨季改善の兆しを見せ、3.7点としていたが、甲斐を軸に高谷、鶴岡の3人が中心となって臨む今季は、大きくプラスの幅を広げそうで、捕手が立つ年間打席数を550打席と想定した場合、その貢献は平均比で16.8点となる計算だ。実現すれば、相対的な数字ではあるが2015年から年間30点以上の上積みとなることを意味し、捕手の攻撃力は、ソフトバンクにとって弱みから強みに転じる可能性が出てきている。打率で比較しても、今季数字を伸ばしているのがよくわかるだろう。

 今季のソフトバンクは、先発投手陣は主力を多く欠き、打線も内川聖一やアルフレド・デスパイネらの離脱が発生している。ここまでまだ首位に立っていないこともあり、2015年や昨季の前半戦のような圧倒的な力を感じる人は少ないかもしれない。

 それでも安定した戦いができているのは、捕手に代表される、弱みを抱えていたポジションにおいて、競争力をじわじわと高めてきたことが好影響しているためだと思われる。捕手以外のポジションに目を向けても、柳田悠岐が集中的に貢献を記録するチームだった2015年と比べると、今季は当時マイナスを記録していたポジションの凹みが小さくなっており、貢献が各ポジションにまんべんなく広がっている様子が見て取れる。「弱みを消す」という形の戦力アップを、今季のソフトバンクは着実に果たしているようだ。(※今季の数値はすべて交流戦終了時点)

(DELTA)

DELTA http://deltagraphs.co.jp/
 2011年設立。セイバーメトリクスを用いた分析を得意とするアナリストによる組織。書籍『プロ野球を統計学と客観分析で考える デルタ・ベースボール・リポート1~3』(水曜社刊)、電子書籍『セイバーメトリクス・マガジン1・2』(DELTA刊)、メールマガジン『1.02 Weekly Report』などを通じ野球界への提言を行っている。集計・算出した守備指標UZRや総合評価指標WARなどのスタッツ、アナリストによる分析記事を公開する『1.02 Essence of Baseball』(https://1point02.jp/)も運営する。

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