西武・秋山の本塁打量産は「突然変異」か「長打力定着の兆候」か
歴代の長打力上位選手は…
そこで、今季の秋山のパワー増加がどれほど大きいものであるかを検証するため、ISO(アイエスオー)と呼ばれるセイバーメトリクス指標を用いたい。ISOとは「Isolated power」の頭3文字を取ったもので、数値は「長打率-打率」の単純な計算で求められる。ISOは長打率と同じく二塁打、三塁打、本塁打の区分けがされ、かつ単打では数値が上昇しない点で、従来の長打力を示す指標の欠点を補う。そのため、純然たる打者のパワーを測るには、現状で最も有用な指標だと言える。
では、そのISOのシーズン記録上位者はどのような顔触れとなっているだろうか。歴代と2000年以降に分けて、それぞれの上位20人を見てみよう。(※ランキングはいずれも2016年までの規定打席到達者が対象)
【ISOシーズン記録上位(歴代)】
1位 バレンティン(2013年・東京ヤクルト) .449
2位 王貞治(1974年・巨人) .429
3位 カブレラ(2002年・西武) .420
4位 王貞治(1966年・巨人) .404
5位 王貞治(1964年・巨人) .4004
6位 王貞治(1976年・巨人) .4000
7位 王貞治(1973年・巨人) .3995
8位 王貞治(1967年・巨人) .397
9位 王貞治(1968年・巨人) .3959
10位 落合博満(1985年・ロッテ) .3957
11位 バース(1986年・阪神) .389
12位 王貞治(1970年・巨人) .388
13位 マニエル(1979年・近鉄) .387
14位 落合博満(1986年・ロッテ) .386
15位 王貞治(1977年・巨人) .382
16位 カブレラ(2003年・西武) .381
17位 山本浩二(1980年・広島) .378
18位 マニエル(1977年・ヤクルト) .3743
19位 小鶴誠(1950年・松竹) .3740
20位 バース(1985年・阪神) .368
シーズン最多記録の60本塁打を放ったバレンティンが1位となっていることや、通算本塁打記録保持者の王氏がランクイン最多であることは容易に想像できたが、それでも、単純に本塁打や長打の多い順に並んではいないのが興味深い。
プロ野球の世界では、長らく“聖域”とされていたシーズン55本塁打を最初に記録したのは1964年の王氏だが、ISOは1974年(49本塁打)、1966年(48本塁打)よりも低かった。同じく55本塁打を放った2002年のカブレラは順当にトップ3入りしたが、37年の時を経て不可侵と思われた記録に並んだ2001年のローズ氏(大阪近鉄)は53位まで名前が出てこない。これは二塁打が19本、三塁打0本と、本塁打以外の長打をそれほど増やせなかったのが原因だ。
40~60本台の本塁打を放った打者がひしめく中で、13位のマニエル氏は唯一の30本台(37本塁打)でトップ20入りしている。この年は死球により97試合の出場にとどまったためで、フル出場していればどれだけ本数を伸ばしていたかは分からなかった。
【ISOシーズン記録上位(2000年以降)】
1位 バレンティン(2013年・東京ヤクルト) .449
2位 カブレラ(2002年・西武) .420
3位 カブレラ(2003年・西武) .381
4位 中村(2009年・埼玉西武) .366
5位 筒香(2016年・横浜DeNA) .3582
6位 松井秀喜(2002年・巨人) .3580
7位 松中信彦(2004年・福岡ダイエー) .357
8位 セギノール(2004年・日本ハム) .352
9位 ラロッカ(2004年・広島) .349
10位 松中信彦(2005年・ソフトバンク) .348
11位 村田(2008年・横浜) .342
12位 松井秀喜(2000年・巨人) .338
13位 ローズ(2001年・近鉄) .335
14位 ローズ(2003年・近鉄) .332
15位 中村(2011年・西武) .3314
16位 カブレラ(2001年・西武) .3307
17位 ズレータ(2005年・ソフトバンク) .3275
18位 ペタジーニ(2002年・ヤクルト) .3270
19位 小久保裕紀(2004年・巨人) .3268
20位 阿部(2010年・巨人) .3273
20人のうち最多本塁打のタイトルを獲得したのは13人だけと、やはりこちらも本塁打のランキングとは異なっている。とはいえ、20人の平均本塁打は47.1本で、いずれも40本塁打以上を記録した強打者だ。先述した2002年の松井稼は64位(.285)で、二塁打のシーズン記録を作った2001年の谷佳知氏(オリックス)も376位(.177)でしかない。