107号清宮に1号を打たれた男の今― 消防士目指す19歳「いつかまた対戦を」

「将来、子供に言ってあげたい。『コイツの伝説はオレから始まったんだぞ』って」

「もちろん、当時は悔しかったです。野球を続けていたら、ずっと複雑な思いだったと思います。ただ、今、野球から離れている僕からしたら、誇りです。野球のことをよく知らない人が『凄くない』なんてことを言う人もいますが、実際に対戦してみて思うのは『彼が凄くなかったら、誰も凄くない』ということです。素直に彼のことを今も応援しています」

 清宮は30日の決勝で1年以来の夏の甲子園をかけ、東海大菅生と激突する。田辺は不思議な“縁”を明かし、すでに敗れた母校の想いも託した。

「その日、僕の誕生日なんです。その日に108号を打って新記録を作ったら運命的だなって勝手に思っています。それで甲子園に行ってほしい。あの夏、清宮と再戦したかったけど、反対側のブロックでお互いに4強で負けた。だからこそ、今回は彼が打って甲子園で優勝してくれたら、自分のことのようにうれしいです」

 果たして、5年先、10年先、清宮はプロのホームラン王だろうか。もうメジャーリーガーだろうか。

「どうなっていても、将来、子供ができたら言ってあげたいです。『コイツの伝説はオレから始まったんだぞ』って。歴史的な1本だったと自慢できるくらいに、清宮には頑張ってほしい」

 こんな話を30分ほど聞いた後だろうか。想いが高まったのか、19歳の青年は揺れ動く思いを明かした。

「清宮とか、オコエとか、大学で活躍している同級生とか、みんなそれぞれの場所で頑張っている。そういう姿を見ていると、自分だけ野球をやっていないことを最近、後悔することが多い。慣れない勉強を頑張ってはいるけど、そこに逃げちゃっているのかなって。ストレートも速くなって、クラブチームとか野球の誘いをもらえるようになってきたんです」

 消防士を目指すのか、野球の道に戻るのか。まだ定まってない。しかし、未来に悩めるのも若者の権利だ。ただ一つだけ、願いがある。

「また、いつか清宮と対戦してみたいですね。実はあの後、ホームランを1本も打たれてない。清宮の1本が高校生活、唯一なんです。だから、また勝負してみたい。打たれるか抑えられるかわからないけど、あの時みたいに、ストレートで」

(Full-Count編集部)

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