「今日打たないと僕に明日はない」―西武13連勝の立役者・山川を支えるもの

降格後に2軍で打率3割を「ノルマ」にした理由

 開幕1軍入りは果たしたものの、4月を終わった時点で出場12試合、27打数3安打2本塁打、打率.111と振るわず、5月1日に登録を抹消された。その時から、並々ならぬ決意でリベンジを目指した。

「ファームでは、自分の調子がどんな状態であれ、絶対に3割以上は残すこと。あとは、四球や出塁率にもこだわって試合に挑んでいました。本塁打は、どうしても出る時と出ない時がありますが、打率や出塁率さえ残していれば、何かあった時に、1軍に行きやすいんじゃないかと思って。1軍に上がりさえすれば、結果を残せる自信はありました」

 言葉通り、しっかりと打率.323、出塁率.464、33四球の結果を残し、7月8日に1軍再昇格を掴むと、その当日の楽天戦(Koboスタ宮城)で早速、代打で起用され、右翼本塁打の“一発回答”。同10日(ロッテ戦)の1打席勝負でも左安打で期待に応え、翌11日からの先発出場を勝ち取った。

 だが、先発起用が続いた4試合目(7月18日vsソフトバンク戦)で、1試合3三振を喫してしまう。翌19日のスターティング・オーダーから、山川の名前は消えた。「今年、僕は今まで積み上げてきたものがないんだから、いかに打ち続けるか。昨日打ったら、今日も打つ。で、明日も打つ。これからの残りのシーズン、それをずっとやり続けていくしかないんだ」。自分が置かれている現状を改めて突きつけられると、自らに言い聞かせるように、黙々と室内練習場でマシンに向かった。

 7月26日、チャンスは再び巡ってきた。6試合ぶりに先発復帰すると、勝ち越しタイムリーの働きで、『明日への通行手形』を手に入れた。以後、スタメン起用が続いているが、心の中には、常に「1日1日が勝負」の思いを抱えている。その重圧の中で、勝利に直結する結果が出始めているのは、「2軍での2か月が生きている」からだ。

「2軍でも、3割を打つって、決して簡単なことではないんです。1日1本ヒットを打てないと、3割にはいかない。ファームで1日1本打つ難しさと、1軍で生き残るために、1日1日が勝負で、毎日結果を出さなければいけない状況って、一緒だなと思って3割をノルマにしていました」

 まさに、その積み重ねが、結実していると言えよう。

「2か月かかりましたが、終盤戦に向けて、準備はできたかなと思っています」

 昨日からつながった今日を、明日へつなげる。そのための“1本”を求め、1日1日に全身全霊を捧げる。

(上岡真里江 / Marie Kamioka)

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