「松井秀喜との対戦は面白かった」 名手たちが脳裏に刻む「名勝負」の記憶
打倒・巨人への思い、バース氏「対戦するのは本当にタフだった」
そしてどのチームも「打倒・巨人」で向かって行った時代。多くの選手たちは特別な想いを持って、巨人戦のフィールドに立っていた。
「巨人のバッテリーから盗塁をするのは快感でした。強いチーム相手に実力を発揮するという意味でも気持ち良かった。当時のうち(=大洋)は本塁打がパカパカ打てるような打線ではないし、決して強くなかったから……」
「人工芝だったし走りやすかったイメージがある。後楽園の時は芝足も短かったからね。東京ドームになって芝足が伸びた時には、少し違う感覚があったけど、スパイクなども改良して対応したね」
そう語るのは「スーパーカートリオ」として一世を風靡した屋鋪要氏(※7)。その後、屋鋪氏自身が巨人でプレーし、日本シリーズで流れを左右するファインプレーをした(94年10月23日の対西武、東京ドーム)というのも面白い。
そして「伝統の一戦・阪神vs巨人」。最近は求心力も以前ほどではないが、やはりこの対戦には胸踊らざるをえない。この男である、ランディ・バース氏(※8)。
「日本で対戦したのは素晴らしいチームばかり。でも巨人との対戦はやっぱり特別なものがあった。もちろん投手もそう。槙原(寛己)なんて若い頃から本当にスゴかった。江川(卓)も西本(聖)もいた。他の巨人の投手も特別な投手だったので、対戦するのは本当にタフだった」
「まだ来日した時は僕自身も若かったから、とにかく毎日、いろいろなことを勉強して試合に臨んだ。今でもバックスクリーン3連発のことを聞かれるけど、やっぱり巨人戦、しかも甲子園だったからだと思う」
「(後楽園で)江川から場外に打ったのは記憶に残っている。甲子園では場外なんて打てないけど、後楽園だったからというのもある(笑)。でも場外なんてなかなか打てないから、それも、今では本当に良い思い出だよ」
スター選手たちがかなでる「名勝負」の数々。力や技のぶつかりあいに我々は常に酔わされ続ける。選手だけではない。そこには「球場」という舞台の重要性もあることを忘れてはいけない。年に1度の「ビールの祭典」は、野球の素晴らしさを様々な方向から改めて感じさせてくれる。
※1:野村謙二郎(元広島)
右投両打。NPB通算1927試合出場、7095打数2020安打、169本塁打、765打点、250盗塁。
※2:中畑清(元巨人)
右投右打。NPB通算1248試合出場、4838打数1294安打、171本塁打、621打点。
※3:元木大介(元巨人)
右投右打。NPB通算1205試合出場、3397打数891安打、66本塁打、378打点。
※4:西山秀二(元南海、広島、巨人)
右投右打。NPB捕手通算1145試合出場、守備率.995、盗塁阻止率.374。ベストナイン2回、ゴールデングラブ賞2回。
※5:大野豊(元広島)
左投左打。NPB通算707試合出場、148勝100敗138セーブ、防御率2.90。
※6:中村紀洋(元近鉄、オリックス、中日、楽天、横浜)
右投右打。NPB通算2267試合出場、7890打数2101安打、404本塁打、1348打点。
※7:屋鋪要(元大洋、巨人)
右投両打。NPB通算1628試合出場、4263打数1146安打、58本塁打、375打点、327盗塁。
※8:ランディ・バース(元阪神)
右投左打。NPB通算614試合出場、2208打数743安打、202本塁打、486打点。三冠王2回(85、86)
(山岡則夫 / Norio Yamaoka)
山岡則夫 プロフィール
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。