思い出の二遊間 脳裏に刻まれる井口資仁の偉大さ

最も凄さを感じたのは「握り替えの速さ」

「オギ、あまり考えすぎるな。いい意味で、もっと適当にやればいい。適当に投げた方がいい結果が出る」

 その言葉に逃げ出したい気持ちは吹き飛んだ。

「いろいろと励ましていただいて、やるしかないと思えるようになりました」。ただ、シーズンに入っても迷惑をかけることが多かった。送球はなかなか思うようには安定をしなかった。それでも井口は涼しい顔でボールを処理してくれた。体勢を崩すほどの送球から併殺を奪ってくれたこともあった。

「二塁があの人で助かったことは多かった。安心感があった。一番すごかったのはボールの握り替えの速さ。グラブでとって、すぐに送球に転じていた。そして、どんな体勢からでもスローイングできる人だった。スーパースターと二遊間を組めたのは本当にいい経験になりました」

 荻野はその年、残念ながら5月に右足を痛め、戦線を離脱した。翌年からは足の負担を考慮し、再び外野に再コンバートされた。だから、その後は遊撃として井口とコンビを組む機会はなくなった。ただ、それでも一緒に過ごした日々は宝物だ。そしてその中で垣間見た練習に取り組む姿勢は荻野にとって大事な指針となっている。

引退表明でこみ上げた寂しさ、「もっともっと間近で見たかった」

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