史上2人目の10年連続50試合登板 日ハム宮西、“鉄腕“誕生秘話(後編)
ブルペンで投げるのは5球だけ「やる時に集中すればいい」
ブルペンでの準備も厚沢コーチとのやりとりの中で学んでいった。
「リリーフは行くか行かないか、わからない状況が一番ストレスがかかります。昔、登板数が多くなって疲れていた時、アツさんが『(ブルペンで)投げなくていい』と言ったんです。『ここはあいつが抑えてくれるはずだ』ってヤマを張ったわけですが、ヤマは外れることもあるわけで。その時には一言『ゴメン!』って。それで逆に割り切りができました。もう行くしかないですから。0球でマウンドに行ったこともありました。そうやってスイッチの切り換えがうまくなりましたね」
宮西は笑いながら明かした。
現在は、ブルペンで投げるのは5球だけ。それが長く投げ続けている秘訣だ。
「はじめの頃は30球くらい投げていました。若いと、不安だから結構投げちゃうんですよね。でも、それだと1年持たない。1年持ったとしても、2年、3年は持たない。いかに踏ん切るかが大切。肩、肘は消耗品だから、無駄な球は必要ない。やる時に集中すればいい。一気に集中力を高めるというのが自分に合っているのかなと思います。それが持続しないのが先発していた時の欠点だったんですけどね」
若い頃は先発投手陣に複雑な思いを抱いていた時期もあったという。1失点も許されない局面での登板が多いリリーフに比べて、先発は6回3失点でもクオリティースタート(6回以上を投げて自責3以下)と評価される。常に脚光を浴びるのも先発という花形ポジション。セットアッパーは抑えた時よりも逆に打たれた時の方が目立ってしまう。
「抑えて当たり前。打たれたらボロクソ。その厳しさに納得がいかなかったですね。わだかまりがなくなったのは、2年目に優勝した時。7、8回をキクさん(菊地和正投手)と2人で投げて、みんなに『リリーフのおかげ』と言ってもらって、意識が変わりました。3年目、4年目に不調でもがいていた時にも『これまでチームのために抑えてきたんやから』と言ってくれて、完全になくなりました。見てくれる人が見てくれればいいやって」