独走Vホークス最大の“サプライズ” 急成長の育成出身捕手が流した安堵の涙

ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・甲斐拓也【写真:藤浦一都】

今季飛躍を果たした甲斐、大一番を前に感じた恐怖と重圧

 思わず涙がこぼれた。敵地で出来上がった歓喜の輪。初めて、その輪に加わり、リーグ優勝の味を知った甲斐拓也は泣いていた。「優勝が決まった瞬間は幸せでした。やっぱり、あの試合、正直前の日は怖かったですし、優勝が決まる試合でマスクを被る怖さ、プレッシャーがありました」。歓喜と、そして安堵の涙だった。

「前の日からめちゃくちゃ怖くて、不安もありました。なかなか寝られなかった。今までに味わったことのないような感覚でした」。14日のオリックス戦(ヤフオクD)に勝利し、優勝へのマジックナンバーは1になった。翌15日は、16日からの西武戦(メットライフD)に備えての東京への移動日。勝てば優勝が決まるシンプルな構図となった大一番に向け、立川市内のホテルの部屋で甲斐は不思議な感覚に陥り、なかなか寝付けずにいた。

 決戦の日。メットライフドームには多くの報道陣が訪れ、ベンチ内、ベンチ前と人がごった返していた。そんな異様な光景も、緊張に拍車をかけた。練習中も「めちゃくちゃ緊張してます」と表情が硬い。この日の先発は、チームトップの勝利数を挙げている東浜巨。1年間、甲斐がバッテリーを組み、戦い抜いてきた右腕。女房役として「何とか巨さんを勝たせたい」という一心だった。

「試合に入ってみたら、いつも通り出来たかなと思います」。試合が始まってみれば、落ち着いていた。この日の東浜は絶好調。鬼気迫るほどの気合にも溢れていた。2回に山川にソロ本塁打を浴びて先制点こそ許したが、6回までに許した安打はわずか2本だけ。打線が4、5回と得点を奪ってリードを広げ、7回からは継投策で逃げ切った。甲斐自身は7回までマスクを被ったが、8回に代打を送られ、優勝の瞬間はベンチで迎えた。

スローイングスピードと強肩、ガムシャラさとひたむきさ

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