独走Vホークス最大の“サプライズ” 急成長の育成出身捕手が流した安堵の涙

スローイングスピードと強肩、ガムシャラさとひたむきさ

 守護神のサファテが、最後の打者・メヒアを三ゴロに打ち取ると、ベンチを飛び出した。工藤公康監督を7度胴上げし、宿舎では初のビールかけを満喫した。「優勝した瞬間も幸せでしたし、ビールかけも最高に幸せでした。少しハシャギ過ぎちゃったかな」。ビールを浴びてびしょ濡れになりながら、笑顔が弾けた。初めて1軍の力となった1年が、まずは報われた瞬間だった。

 甲斐拓也、24歳。

 2年ぶりにリーグの頂点を奪い返したソフトバンクにあって、今シーズン最大のサプライズだったのが、この男の成長だったろう。2010年の育成ドラフト6位で、大分の楊志館高校からソフトバンクに入団。身長170センチ、75キロ。体格は小柄ながら、ポップタイム1.7秒を誇る、スローイングスピードと“キャノン砲”と称される強肩を武器に正捕手候補となった。

 東浜巨、千賀滉大、石川柊太、松本裕樹といった、かつてファームでバッテリーを組んでいた若手投手と主にバッテリーを組み、シーズンの半分を超える77試合に先発(25日時点)。5月2日の西武戦(ヤフオクD)で放ったプロ初本塁打が満塁本塁打、6月27、28日の日本ハム戦(ヤフオクD)で初の2試合連続本塁打、7月19日の西武戦(北九州)で初の2打席連続本塁打と、打撃でも意外性溢れる結果を残した。打席ではバットを短く持ち、ホームベースに覆いかぶさるように立つ。常にガムシャラさと、ひたむきさが滲み出るその姿勢は、多くのファンの心を掴んだ。

 初めて1軍の戦力として戦った2017年。至上命令とされたリーグ優勝に、チームの一員として貢献した甲斐は、この1年をどう感じ、どう戦っていたのか。ほとんど全てのことが初体験のことばかり。昨季までの1軍出場は15試合のみ。それが今季は途中出場も含めて98試合でグラウンドに立った。

飽くなき向上心、「僕の責任」との言葉

RECOMMEND

KEYWORD

CATEGORY