ドラ1候補・田嶋、「ジャパン」での悔しさに“終止符” 運命の日へ「待つだけ」

大会直前にアクシデントも、決勝は「志願」の登板「間に合ってくれて良かった」

「ようやく投げられて良かったです」

 実感のこもった一言だ。投手陣の柱として選出され、開幕投手を務める予定だった。ところが、台湾へ移動した9月30日の練習中にアクシデントが発生した。野手の送球が田嶋の右側後頭部を直撃。病院に行き、検査を受けた。異常はなく、翌日は軽めに練習。2日からキャッチボールを再開したが、開幕の香港戦には間に合わなかった。

 昨年はU-23代表の一員として「第1回 WBSC U-23ワールドカップ」(メキシコ)に出場したが、腰を痛めており、登板できなかった。「ジャパンに行くといい感じじゃないなというのがあった」と漏らす。チームに申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 日に日に投球練習の球数を増やし、石井章夫監督も杉浦正則コーチも田嶋の調子が上がっていっていることを確認。場所が場所だけに「あとは本人次第」と田嶋の気持ちに託していた。チームは予選ラウンドを1位通過。6日のセミファイナル韓国戦に勝利し、宿舎に戻った後、田嶋は石井監督の部屋を訪ねて言った。

「残りの2日間、いつでも行けるように準備をしておきます」

 石井章夫監督は「本人から心も体も万全だと志願があった。ちょうどいいタイミングでチームに戻ってきてくれた。間に合ってくれて良かった」と、決勝の先発を任せた。試合間隔が空いたことで完璧な投球が難しいことは田嶋本人がよくわかっていた。だから、「最低限の仕事をしようという気持ちだった」と話す。走者を背負っても、ホームだけは踏ませない。5回までゼロを並べ、「形としては良かったと思う」とうなずいた田嶋。杉浦正則コーチは「気合いが空回りするところもあったが、私からは先に点はやるなと言っていた。それを守ってくれて良かった」と称えた。

 2年前に敗れた悔しさ、昨年投げられなかった申し訳なさ。様々な気持ちを乗り越え、今回も日の丸を背負った田嶋。不慮のアクシデントに見舞われたが、最後の最後にアジアチャンピオン奪還に貢献した。今月26日に行われるドラフト会議の1位候補左腕は「どうすることもできないので、ただただ、待つだけです」と運命の日を静かに待つ。

(高橋昌江 / Masae Takahashi)

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