一時就職活動からドラフト候補へ 先輩・源田との対戦を夢見る23歳右腕

NPB目指し独立リーグ入り選択、夢は先輩の西武・源田との対戦

 復活の手応えを掴み始めた大蔵は、憧れていたNPBの世界に立つために、独立リーグで野球を続けることを選んだ。生活は決して楽ではない。前期シーズンと後期シーズンの間に、ショッピングモールのお中元売り場でアルバイトも経験した。それでも、野球に集中できる環境に感謝している。徳島に入団してからはウエイトトレーニングを強化。体重は14キロ増え、それまで140キロ前後だった球速は147キロまで上がった。今シーズンは高卒1年目のルーキー、伊藤翔投手と共に先発の柱を担い、独立リーグ日本一を決めるBCL覇者・信濃グランセローズとのグランドチャンピオンシップでも3試合に登板。初戦で5失点を喫したものの、第3戦で2安打完封の好投を見せると、第4戦でも好救援。チームの日本一に貢献する活躍を見せた。

「昔は挫折していたような場面でも、今は気持ちをいい方向へ持っていけるようになりました。試合を振り返ることはあっても、引きずることは無いように心がけ、自分をコントロールできるようになりました」

 愛知学院大の先輩、西武の源田壮亮内野手と対戦することが夢だ。数々の新人記録を打ち立て、パ・リーグ新人王最有力候補のルーキーは今シーズン、エラーを自らのバットで取り返す場面が度々見られた。

「源田さんは、大学の時も『エラーしても打って返せばいい』という感じだった。自分も『打たれたら次の試合で抑えればいい』と思って投げたい。見習いたいです」

 打たれるのを恐れ、野球から逃げていたかつての自分と決別した大蔵は「NPBに入らなければ何も始まらない。何が何でも、入りたい」と力強く話す。辛い時を支えてくれたチームメートに、NPBの舞台で躍動する姿を見せることができるか。運命の日に注目したい。

(篠崎有理枝 / Yurie Shinozaki)

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