鍵は柳田と梶谷の起用法? 日本シリーズ「ホークス対DeNA」徹底分析

ソフトバンク・柳田(左)とDeNA・梶谷(右)【写真:荒川祐史】
ソフトバンク・柳田(左)とDeNA・梶谷(右)【写真:荒川祐史】

ホークス「王道野球」、DeNA「深慮遠謀」

 質実剛健の強さで2年ぶりにパ・リーグ王座に返り咲いた福岡ソフトバンクと、クライマックスシリーズを勝ち上がった横浜DeNA。今年の日本シリーズは、前身の球団を含めて初の顔合わせとなった。勝敗の行方を左右する流れや勢いは理屈で表し切れるものではない。引き分けがなければ最大7試合4戦先勝の戦いで、チーム、個人ともにシーズン成績の示す傾向が必ずしも顔を出すとは限らないことは、過去67回の歴史が証明している。それでも、これまでの戦いの蓄積から読み取れる情報とその比較は、やはりシリーズの勝敗を占う上で欠かすことができない。

【投手力、守備力で優位の福岡ソフトバンクと、失点を防ぐための工夫が必要な横浜DeNA】

 両チームの大まかな強さを把握するために、まずはシーズン中の1試合あたりの得点、失点を比較したい。福岡ソフトバンクは4.46/3.38、横浜DeNAは4.17/4.18で、リーグ1位と3位のチームの力量差が見て取れる。得点力に大差はないが、失点の数をリーグ最少の483にとどめた福岡ソフトバンクに対し、横浜DeNAは598点を取られた。

 一見、福岡ソフトバンクが大きなアドバンテージを握っているように映る。だが、先発の防御率3.46は横浜DeNAの3.76とさほど変わりがない。「何が起こるか分からない」短期決戦では、いかに「計算」の立つ要素を増やしていくかが重要となる。その点で、今シリーズは奪三振率の高い先発投手が多いことに注目したい。投手が三振を奪えば、何も起こらない可能性が高いからだ。

 福岡ソフトバンクのバンデンハーク投手は奪三振率9.53、千賀滉大投手は9.50のハイレベル。今季はともに2桁奪三振を5度記録するなど、はまった時は打者を圧倒する投球が期待できる。対する横浜DeNAは、ルーキーの濱口遥大投手が規定投球回未満ながらリーグベストに相当する9.90をマークした。石田健大投手は8.75、今永昇太投手も8.51と高い数値を記録している。クライマックスシリーズファイナルステージで横浜DeNAに敗れた広島の先発陣では、奪三振率がリーグ平均を上回っていたのは薮田和樹投手だけだった。

 投手の仕事は三振を奪うことではないが、その数が多ければ味方の守備機会を減らすことにもつながる。今季の福岡ソフトバンクは投手陣全体でリーグトップの奪三振率8.49をマークした。そのためグラウンドに打球が飛ぶ回数も少なく、5281守備機会は両リーグ最少で、1試合平均36.9守備機会はリーグ史上6番目に少ない数字となっている。シーズン最少タイとなる38失策での記録樹立には、味方の守備機会を減らしたピッチングスタッフの投球が一役買った。横浜DeNAの66失策も少なく、失策の多寡で守備力は測り切れないが、バックの安定感でも福岡ソフトバンクに軍配が上がるだろう。

 奪三振と言えば、打者238人と相対して、その半分近くの102三振を奪ったサファテ投手だが、クローザー対決では横浜DeNAの山崎康晃投手の実力もそん色ない。となれば、いかに最終回までリードを保つかも重要になりそうだが、福岡ソフトバンクの救援防御率2.78に対して、横浜DeNAは3.90と先発を下回る数字だった。先取点を挙げた試合は福岡ソフトバンクが73勝9敗(勝率.890)で、横浜DeNAは54勝20敗(.740)でしかない。ラミレス監督がその点を留意していたことは、クライマックスシリーズファイナルステージでの采配からも見受けられる。

 シーズンの戦い方から日本シリーズでの試合展開を予想すると、後半に進むほど主導権を握るのは福岡ソフトバンクになりそうだ。また、シリーズが長引いて第6戦、第7戦まで突入すれば、これは「短期決戦」ではない。そうなると、横浜DeNAはクライマックスシリーズで8試合を消化しており、疲労によるパフォーマンスへの影響も懸念される。手数が足りなくなれば、クライマックスシリーズファイナルステージで見せたように総力戦で挑む展開も想定しているはずだ。

クリーンアップはほぼ互角

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