「何してんだろ、俺って」―ソフトB上林、歓喜の中で流した悔し涙の意味

1年間フルに戦った実感した「継続することの難しさ」

 日本シリーズでも、40人枠には入っていたが、第3戦、第4戦の2試合にベンチ入りしただけ。打席は第4戦の代打での1打席だけに終わった。ほとんど何も出来ないまま、チームは日本一になった。

「改めてこのチームでは、ギータ(柳田)さんとか、あれくらいの選手にならないとダメなんだと思い知らされました。圧倒的な数字、誰にも文句を言わせないような結果を残さないとダメだなと思いました」

 日本一に輝いてから3日後の11月7日、上林はファームが秋季キャンプを行う宮崎・生目の杜運動公園にいた。9日から始まる侍ジャパンの合宿に備えるためだ。悔しさは胸からは消えていない。ただ、その悔しさを、糧にしようとする上林がいた。「自分の人生っていつもこんな感じなんですよね。次への飛躍のためのステップを神様が作ってくれるというか、そんな感じでこれまでも成長してきたので。トントンと来ているように見られますけど、そうでもないんですよ。こういうことがないと本気にならない。そういう意味ではありがたいと思っています」。その言葉には、熱く燃える思いが感じられた。

 初めて、1年間1軍で戦い続けた2017年。プロ野球選手として、1年間フルで戦い続けることが、いかに難しいことなのか、を痛感した。「40点くらいですかね」と自己採点するシーズンだったが、紛れもなく、自身の財産ともなる1年でもあった。
 
「あの(シーズン序盤の)状態でずっといければ、という思いはありましたけど、継続することの難しさを感じましたね。継続するのに必要なものですか? 何ですかね…。体重のこととかもそうですけど、もう少し細かく考えればよかったかなとか。例えば、シーズン中のウエートとかにしても、どれくらいのセット数、重さでやれば、もう少し身体を維持できたとか、そういうところまで考えておけば、あそこまでブレなかったのかな、とか。試合の時に筋肉痛のままやった時もあったし、本来、そういうのを残してやりたくないタイプなので、そこは、1年やってみて見えてくるものもあった。1年間通して出来たので、それはまあよかったですけど。アレ(最後の悔しさ)も良い経験だったと思うようにしています」

 歓喜の中で、22歳が一人流した悔し涙。それはもうひと回りも、ふた回りも、自分を大きくしてくれる糧になる。上林誠知。悔しさと不甲斐なさで終えた2017年が、彼をもっと凄い打者にしてくれる。そんな気がしてならない。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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