兄より先に引退を決めた新井良太 強打者たちが立ちはだかったプロ人生
2010年からは兄弟で阪神に在籍してチームメートに
2010年オフに水田圭介との交換トレードで兄・貴浩も在籍していた阪神へ移籍した弟・良太。阪神の1軍でプレーした兄弟選手は初代ミスタータイガースの藤村冨美男と通算135勝の藤村隆雄兄弟と、1984年のドラフトで同時に入団した嶋田章弘(弟1位 投手)、島田宗彦(兄4位、捕手)兄弟がおり(他に、時代は重ならない兄弟選手として西村一孔、西村公一がいる)、新井兄弟は3組目となった。
皮肉なことに、阪神では、ポジションが被る兄が弟の前に立ちはだかることになった。良太は外野も守るようになるが、1年目は43試合出場止まり。2年目の2012年、良太は主に三塁を守って110試合に出場。規定打席には未達だったが322打数90安打11本塁打32打点を記録した。この年の兄は一塁で122試合に出て460打数115安打の打率.250だったが、本塁打は9本。初めて弟が本塁打数で兄を上回ったシーズンとなった。
この2012年は兄弟ともに100試合超に出場。同じ年に同一チームで兄弟がそろって100試合以上出たのはロッテのレロン、レオンのリー兄弟(1978年~1981年)に続いて2組目。日本生まれの兄弟では初めてのことだった。新井兄弟は翌2013年も揃って100試合超に出場。弟・良太の119試合357打数85安打14本塁打51打点、打率.238に対し、兄・貴浩は140試合476打数127安打15本塁打70打点、打率.267の成績を残した。
ただ、弟・良太の出場試合数は、この2013年がキャリアハイ。以降、出場機会は減少していき、2015年は兄・貴浩が古巣・広島に復帰。そして、弟は今季限りでの現役引退を表明した。新井兄弟が揃って阪神に在籍したのは2011年から2014年の4シーズン。この間に、アベック本塁打なども記録した。
引退後は2軍の育成コーチへと就任する新井良太。1軍での通算成績は、630試合1253打数298安打40本塁打151打点、打率.238。兄よりも素質で勝ると言われながら、成績は兄にはるかに及ばなかった。何と言っても伸び盛りの20代に、中日で控え選手に甘んじたことがキャリアに響いた。初めて100試合に出たのは29歳。遅咲きだったことは否めない。苦労人だっただけに、指導者としての成功を祈りたい。
(広尾晃 / Koh Hiroo)