若手躍進を支えたベテランの献身、ホークス高谷が歩んだ数奇な野球人生

「高谷さんがいたから楽な気持ちでいけた」

 9月16日のリーグ優勝決定後の祝勝会で、甲斐選手と高谷選手はお互い涙したことを暴露し合いながら、「高谷さんには本当に支えられたんで。高谷さんがいたから楽な気持ちでいけた」「今年はもうタク(甲斐選手)の頑張りが全てだと思います。何年も前から、ずっと勉強してるのも分かってたんで。自分も学んだこともいっぱいありました。そういう風に、お互い高め合っていけたら」と、年の離れたライバルを率直な言葉で讃えた。勝利の美酒でびしょ濡れになったその姿は微笑ましく、2人が良好な関係を築いていたことを感じさせた。

「おまえたちはプロではない」という厳しい言葉を向けられる育成枠から、ベストナインとゴールデングラブ賞に輝き、日本代表にまで上り詰めた25歳の甲斐選手。プロ入り前から他の選手にはない躓きを経験して、長い選手生活を通じて天国も地獄も味わってきた36歳の高谷選手。タイプも経歴も違う2人の有力な捕手が控えていることが、福岡ソフトバンクの強みの1つであると言っても良いだろう。

 今オフは高谷選手と同い年の鶴岡選手がFA、甲斐選手と同じ年にドラフト1位で入団した斐紹選手がトレードでチームを離れたが、ファームでは栗原選手、九鬼選手、谷川原選手といった有望な捕手たちが少しずつステップアップしている。チームの正捕手争いが今後どのような様相を呈するのか、誰にも予想することができない。

 ただ、高谷選手だけが持っている経験、それに基づいた力が必要とされる日は、来季もまた訪れるはずだ。波乱万丈の野球人生を経て常勝球団の主戦捕手となった高谷選手には、これからも熟練の技を披露し、投手陣とチームをリードし続けてほしい。

【動画】正確な送球で盗塁を阻止するSB高谷

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