「10.2決戦」の悔しさを糧に― かつてのオリ「切り札」、35歳右腕は復活なるか
巻き返しに向け、求められる投手王国再建
しかし、18年ぶりの頂点を逃した悔しさを晴らすために挑んだ翌年、オリックスはまさかのリーグ5位に沈む。比嘉自身も右肩痛に苦しめられ、あの日のリベンジのチャンスさえつかむことができない。夏には全治5か月という右肩関節唇の修復手術に踏み切り、長いリハビリ生活を送ることになった。
1軍のマウンドに戻ってきたのは、2016年6月12日。復帰登板からしばらくは安定した投球ができなかったが、7月10日から8月24日にかけて、10試合連続無失点と復活の兆しを見せ、8月10日の福岡ソフトバンク戦では2014年の9月7日以来、実に703日ぶりとなる白星を手にする。そしてプロ8年目を迎えた今季は、昨季より少ない8試合の登板に終わってしまったものの、ファームでは43試合に登板して防御率1.02と、新進気鋭の若手が多い投手陣の中で、さすがの貫禄を見せ付けている。
今季、オリックスのチーム防御率はリーグ5位の3.83だった。2年連続でリーグトップのチーム防御率を記録し、12球団屈指の投手王国を築いていたのはもう過去の話になりつつある。
だが2014年の悔しさを晴らすためには、その王国の再建が必要だ。幸いファームでは期待の若手投手たちが、ウエスタン・リーグトップのチーム防御率をマークしている。ファームで過ごす時間が長かった比嘉も、悩む後輩たちに積極的にアドバイスを送り、チーム力の底上げに寄与しているという。比嘉のようなベテランの経験と、若い力をかみ合わせて。来季こそはあの日のような涙ではなく、「22年」分の笑顔を見せてほしいものだ。