「また一緒にやれたら…」楽天松井とDeNAドラ8楠本、小中同級生をつなぐ縁
小学6年で転校した楠本、「何か運動していないの?」と声を掛けたのは…
楽天・松井裕樹投手と、DeNAに今年ドラフト8位で入団した楠本泰史選手(東北福祉大)は、小・中学校時代のチームメイト。そんな2人が今月上旬、仙台市内で対談し、幼き日の思い出を語りあった。
大阪から仙台に帰ってくる松井を、楠本は「今までの話を楽しくしたいと思います」と心待ちにした。遅れて到着した松井は「(ドラフト後)球団が決まってから会うのは初めて」と、こちらも待ちきれない様子で店内へ。「お待たせしました!」と松井が入ると、「それ! 何分、待たせるの?」と楠本。2人の顔に笑みが広がった。
2人の出会いは横浜市立山内小6年の時。きっかけは楠本の転校だった。楠本は大阪で生まれ、銀行に勤める父の仕事の都合で小学1年の終わりに岡山へ転居。小学6年の時、横浜に移った。「親が駅から近くて小学校にも近いマンションを探したら、たまたま通うことになった小学校に裕樹がいた。今、思うと、これを運命というんでしょうけど、その言葉で片付けていいのかどうか。本当にすごい出会いだなと思いますね」と楠本。転校生に興味を持った松井に「何か運動していないの?」と声を掛けられ、野球をやっていることを伝えると、「俺らとやろうよ」と松井が所属していた元石川サンダーボルトへ誘われて入団した。松井はキャッチボールの後の楠本のクイックが速かったことが印象に残っているという。
ともに横浜ベイスターズジュニアでもプレーした。松井は小学5年の時にセレクションで落選しており、小学6年での合格に心燃やしていた。一方の楠本は小学5年まで岡山で育っており、「ベイスターズジュニアって言われても『何それ?』って感じだった」と笑う。セレクションを「一緒に受けに行こうよ」と松井に誘われ、チームメイト数人と受験。ともにセレクションに受かり、NPBジュニアトーナメントに出場した。その7年後、楠本がDeNAから指名されるのだから、縁とは不思議なものだ。当時の写真を見た松井が「クッスー、変わっていないじゃん!」と言うと、「お前も変わっていない!」と楠本。2人で当時を懐かしみ、笑いあった。
横浜市立山内中時代も青葉緑東シニアで一緒にプレー。3年夏には日本リトルシニア野球選手権大会で日本一に輝いた。高校は松井が桐光学園(神奈川)、楠本が花咲徳栄(埼玉)へ進学。公式戦で対戦したのは3年春の関東大会初戦だった。松井はすでに2年夏の甲子園でブレーク。対戦が決まった時、「ウチの学校の気合い度は半端なかった」と楠本は振り返る。
2人の対戦は、1打席目は松井がセカンドゴロに抑え、2打席目には三振を奪った。3打席目に楠本がセンター前ヒットを放つと、4打席目はライトへ大きな当たりを打った。「打った瞬間、やったと思った。走りながら、これはニュースになっちゃうんじゃないかなと思った」と笑う楠本。松井は当時を思い出したかのように顔をしかめ、「『うわ、終わった』と思った。あれは本当に終わったと思った」と回顧。ところが、強風で打球が戻された上、桐光学園の右翼手が好捕(「スーパーキャッチした」と松井)し、ライトフライに倒れた。
この対戦を松井が「高校の中で一番楽しかった。キャリアの中で楽しいと感じた試合は、これが一番」と言えば、楠本も「嬉しい試合とかは他にもあるけど、心の底からワクワクしたのはこの試合。相手チームの選手と勝ち負けよりも楽しさを意識してやったのはこの試合だけ」という。2人にとって特別な試合になった。