走塁で甲子園沸かせた「機動破壊」 盗塁成功へ重要な4つの要素と指導法

専門家が細かく分析、桑田氏からは「サインを盗む行為は容認されるのか」の問いかけも

 宮西氏は、近代野球において機動力野球は重要であると説き、野球におけるスプリント特性について紹介。野球選手には、せいぜい90メートルを全力で走る能力があれば十分。そういう体力トレーニングが必要だとした。スタート局面でのクロスオーバーステップとジャブステップの比較、一塁への走塁時には走り抜け、ヘッドスライディングのどちらが有利か、スプリントにおける方向転換はサイドステップとクロスステップのどちらが有利か、などを数値を示して紹介した。

 また。鹿屋体育大学特任助教の永原隆氏は、陸上の専門家として、陸上競技短距離走に関する知見の野球への応用について説明した。

 速く走るには、力の大きさよりも「方向」が大事であり、正しい前傾姿勢など短距離走の技術を紹介。陸上競技の研究成果を野球に応用してほしいと語った。さらに、子供は8.8歳から12.1歳の間に一般的な疾走能力発達が一時的に停滞することを理解して個人の成熟度を見極めた指導が必要だと説いた。

 質疑応答では、桑田真澄氏から「プロはヘッドスライディングは自己責任だからいいが、学童は安全管理とフェアプレーが基本だから、ヘッドスライディングは安全と言えるのか。またサインを盗むという行為は容認されるのか」という質問があった。シンポジストは、それぞれの意見を述べたが、大いに議論の余地があるようだ。

 最後にコーディネーターの宮西氏は野村克也氏の言葉を引用して「投打が“ヒマワリ”なら、走塁は“月見草”」とし、今後、科学的なエビデンスをもって走塁を指導してほしいと締めくくった。

(広尾晃 / Koh Hiroo)

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