【3割打者を考える(3)】「3割打者は優秀」は人為的に維持されてきた?

米MLBではベーブ・ルースが登場した1920年に超打高投低に

 グールドによれば、MLBが創設され、試合結果が数字で記録されるようになってからというもの、ルール管理者が常に投打のバランスを気にかけ、極端な打高投低や投高打低になったときは、ルールを修正して針の振れを元のバランスにもどす努力をしてきたとし、文中にも「ルール改正者たちは紙と鉛筆を手に陣取り、平均打率が理想レベルに復帰するようなルール改正を予言しようとしているなどとは、とても思えない。むしろその時々の有力者たちは。打者と投手の間の適切なバランスを取り持つ独特の感覚を備えていて、しかるべくその都度細かいところ(マウンドの高さ、ストライクゾーンの大きさなど)をいじくるのだろう」と記している。

 その結果としてBABIPは3割前後に維持され、リーグ平均打率も.250前後で固定されるのだ、としているグールドのこの本は、マクラッケンがBABIPの考えを発表する1年前に世に出ている。そのため、BABIPに言及していないが、奇しくもその理由を説明していたのである。

 さらに、グールドは野球史の中には、リーグ管理者がわざと投打のバランスが崩れるのを放置した時代があるとも語っている。それは、ベーブ・ルースの登場によって出現した圧倒的な打高投低時代となった1920年だという。リーグ打率は.290を超え、チームによっては3割を超えた。しかし、リーグ管理者はこの状態を放置した。

 1920年と言えば、MLB最大のスキャンダルである「ブラックソックス事件」が明るみに出た年。これによって野球人気は急落したが、このタイミングでベーブ・ルースがすい星のように登場し、本塁打を連発。人々を熱狂させた。リーグ管理者はこのブームに乗って、スキャンダルの悪いイメージを払しょくするために、反発係数の高いボールを導入して打高投低を演出したのだとしている。

日本では戦中にリーグ打率が2割を切る投高打低に

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