【3割打者を考える(3)】「3割打者は優秀」は人為的に維持されてきた?
米古生物学者スティーブン・ジェイ・グールドが唱えた説
「本塁打を除くグラウンド内に飛んだ打球が安打になった割合」であるBABIPは、なぜ3割前後で変わらないのか。それに関連する数字である「打率」も、なぜ.250前後で変化しないのだろうか。
これは大きな謎である。グラウンドが変化し、ボールが変わり、バットやグラブも大きく変化してきた。そして選手の体格も大きく変わっているのに、なぜ安打になる率はずっと変わらないのだろうか?
これにも様々な考察が加えられているが、意外な人物が「正解」と思しき考えを発表している。
スティーブン・ジェイ・グールド、アメリカの古生物学者である。カナダ、バージェス頁岩から、これまで全く知られていなかった古生物が発見されたことを体系づけて紹介し、古生物学に革命をもたらしたことで知られる。同時にグールドは、熱狂的な野球ファンとしても知られている。来日した際に、神宮球場でヤクルト-広島戦を観戦したが、そのとき食べた叙々苑の焼肉弁当の包み紙も大事に保管していたと言われる人物である。
グールドは「Full House(日本での書名は「フルハウス 生命の全容」)」という本で、ダーウィンの進化論を根底から覆す説を唱えて衝撃を与えた。グールドはこの本の中で、進化のメカニズムを「4割打者はなぜ消滅したか」と、大好きな野球を例に引いて説明した「4割打者消滅論」も記しており、その過程でリーグ打率が、時代が変わってもずっと変化しない理由を説明している。