西武の熾烈な内野レギュラー争いに生き残れるか…期待の次期台湾スター候補
昨季はファームで外野も経験、1軍打率は1割台から2割台に上昇
かつて「オリエンタル・エクスプレス」と称された郭泰源氏が在籍したり、毎年「台湾デー」を開催するなど、台湾と長く交流を続けている埼玉西武。かの地にルーツを持ち、日本プロ野球最高峰の舞台で奮闘する若獅子がいる。メットライフドームに響き渡る「ウーイング」でお馴染み、24歳の呉念庭内野手だ。
台湾から岡山の共生高校へ野球留学し、その後も鹿児島の第一工業大学に進学するなど、早くから日本で経験を積んだ呉選手。父親は元台湾代表のプロ野球選手というサラブレッドであり、父とチームメイトだった渡辺久信氏(現・埼玉西武SD兼編成部長)とは幼い頃から面識があった。50メートル5秒台の俊足とシュアな打撃、堅実な遊撃守備を評価され、2015年にドラフト7位で埼玉西武に入団する。
ルーキーイヤーの2016年はファームで3割超の打率を残し、正遊撃手争いの急先鋒としてシーズン中盤に1軍昇格。初出場初先発となった7月10日のオリックス戦でいきなり初安打を記録すると、その後40試合以上に出場し、永江恭平選手や外崎修汰選手らとの熾烈なポジション争いから一歩抜け出したかに見えた。
しかし、2年目の昨年は、新人の源田壮亮選手が正遊撃手の座に収まり、開幕からファーム生活を余儀なくされる。ただそこで、呉選手は確かな成長の証を残した。2016年はファームで278打席に立ち30三振と、9.3打席につき1三振を喫したが、2017年は364打席で37三振、つまり9.8打席につき1三振と、持ち前の選球眼に磨きをかけた。さらに、出場機会獲得のために三塁や外野にも挑戦するなど、1軍昇格へ向けて万全の準備を整える。
そして8月25日、満を持して1軍に昇格すると、8月27日のオリックス戦で待望のシーズン初安打を放つ。その後は、限られた出場機会の中で着実に結果を残し、9月下旬まで2割台後半の打率を維持した。5試合連続安打も披露し、最終的には打率.231をマーク。打率1割台(.194)に終わった前年から、確かな成長を見せた。
2017年は不慣れな三塁で試合出場を重ね、ファームで外野にも挑戦するなど、多くの経験を積んだ呉選手。今年は源田選手をはじめ役者が揃う内野陣で、レギュラー奪取に向けて戦うことになる。左投手も苦にしない柔らかい打撃と、ファームで高出塁率を残す選球眼をしっかりアピールできれば、少しずつでも目標に近づくはず。2018年、シーズンを通して西武ドームに「ウーイング」が響き渡ることを期待している。