飛び交う賛否 中日の松坂大輔獲得は、果たして是か非か

引き際は人それぞれ、「やりきったと思えるわけがない」と語る松坂

「ウチには若い選手も多いので、いろいろなものを参考にさせてもらいましょうと話はしました。松坂世代、松坂世代といって後ろ姿を追いかけてきた若い選手もいるんで、そういうもの、あるものを全部見せて、使って、言葉で、体で、いろんな後ろ姿でウチの選手にいろんなことを教えてやってほしい」と森監督は言う。松坂を押し出すくらいでなければいけないし、松坂にも力を取り戻して若手の壁になることが求められる。どちらにとってもぬるま湯であってはいけない。

「やりきったと思えるわけがないですよね。怪我をして、投げられなくて辞める、諦めるというのはしたくなかった。場所は変わるかもしれないですけど、投げ切って終わりたいという気持ち」と松坂は言う。選手それぞれに考え方があり、美学がある。まだやれる内に身を引くことも美学なら、ボロボロになるまで、燃え尽きるまでやるのも、その人の美学だ。引き際を周りが、とやかく言うものでもない。

 松坂自身は不調に悩まされ、苦しめられた右肩の状態についてこう語っている。

「去年の終盤ですけど、投げられそうな手応えがあった。僕はこの話をもらった時に、投げられる自信が無ければ断るつもりでした。オフの間もずっとトレーニングをしてきて、しっかり投げられるところを見せられると思ったので、ここに来ました」。現時点で、肉体面の不安はないようだ。

「10勝も20勝もしろとは言いません。ただ、自分がやり尽くしていなければ、やり尽くすまでココでやってみればいい」と森監督は言う。燃え尽きるまで、やればいい――。“最後の花道”を森監督は用意したのだ。

 言い方は悪いが、中日にとっては“客寄せパンダ”でもある。長年のキャリアがある今、それは松坂も理解しているだろう。「プロ野球選手はプレーできる場所がないとどうにもならないので」。右腕にとっては、現役としてプレー出来る場所が必要だった。そこから先は力と結果次第。兎にも角にも、中日にとって、そして中日ファンにとって、松坂加入は決してマイナスではないはず。

「日本に戻ってきて3年間まともに投げていないので、あまり僕の口から大きなことは言えないですけど、いろんな人に恩返しするためにも、1軍のマウンドに立つことを目標に、感謝の気持ちを持ってマウンドに上がれたらいいなと思います。大した力になれないかもしれないですけど、チームが少しでも上にいけるように、しっかりやりたいと思います」

 そう心境を吐露する“平成の怪物”の復活を願いつつ、行く末を見届けようではないか。

(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

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