打率4割超も「脱走計画2回立てた」 DeNA乙坂がメキシコで体感した真剣勝負

メキシコでのウインターリーグで活躍をみせたDeNA・乙坂智【写真:荒川祐史】
メキシコでのウインターリーグで活躍をみせたDeNA・乙坂智【写真:荒川祐史】

メキシコで大活躍も…乙坂「いやいや、楽しいわけがない」

「マジでキツかったです」

 昨年オフに単身渡ったメキシコでの日々について問われると、DeNA乙坂智外野手は大きな目をさらに見開いて、力強く言い切った。「マジでヤバイ。超真剣勝負でした」と振り返る。

 中南米の野球と言えば、ドミニカ共和国やキューバ、メキシコなども含め、明るく楽しいイメージが強い。観客席で踊る熱狂的なファンがいれば、点が入った時や試合に勝った時の選手の喜び方も情熱的だ。確かに中南米出身の選手は「野球を楽しむ」「楽しい野球」という言葉をよく使うが、それは日本人が想像する「楽しい」とは少し意味が違うようだ。「楽しさ」は仲良しこよしの馴れ合いから生まれるのではなく、真剣勝負から感じる達成感や充実感から生まれてくる。

「みんな聞くんですよ。『ウインターリーグ楽しかった?』って。いやいや、楽しいわけがない。ヒットを打った時とか、端々を見れば中南米の人は感情表現が豊かなんで楽しそうに見えるかもしれないけど、試合はガチです。日本以上に真剣。勝負に懸ける気持ちは半端ない。今季の契約がない選手がたくさんいて、ウインターリーグでいい成績を残して契約を勝ち取ろうとしている。練習の時とかワイワイしてますけど、試合開始40分くらい前になると超真剣ですから」

 ドミニカ共和国のウインターリーグでは、毎日ロースターの変更が可能だ。だが、メキシコでは一度ロースターを外れると5日間は復帰できない。その間に他の選手がいい成績を残したら、ロースターに復帰できない可能性は大。「1回外されるとチャンスがない」と、みんなが生き残りに必死だ。そんな中、乙坂は11月11日の“デビュー戦”で3安打の活躍をすると打って打って打ちまくり、最終的には27試合で打率.410、OPSは.967という圧巻の成績。それでも「とにかく人生で一番長い1か月でした」と苦笑いしながら振り返る。

経験した「サバイバル」、時には「ろくでなし」の言葉も

RECOMMEND