打率4割超も「脱走計画2回立てた」 DeNA乙坂がメキシコで体感した真剣勝負
メキシコで得た新たな気付き「その瞬間瞬間を一生懸命生きる」
乙坂を球場に引き戻したのは、チームメイトたちの野球に対するアプローチだ。1か月の滞在中に一度だけ雨が降った日のこと。「よっしゃ、ノーゲーム!」と喜んでいた乙坂に対し、チームメイトは揃って「トモ、何言ってるんだ!? このくらいだったら試合しようぜ」と声を掛けた。連戦中に球場に着いて「カンサード(疲れた)」と言った時も、チームメイトに「何で? 今から野球やるんだぞ!?」と返されたという。
「試合をできないことが嫌なんですよ、彼らは。野球が大好きだから。朝球場に来て、野球ができることが幸せっていう感覚。雨天中止でラッキーなんて感覚はない。いいなぁ、この感覚って思いました」
脱走寸前まで追い込まれながらも何とか乗り切った1か月は、今季で7年目を迎える乙坂にいろいろな気付きを与えた。
「その瞬間瞬間を一生懸命生きるっていうんですかね。今の連続が明日につながって、明日のことを考えて今がおろそかになってはいけない。明日頑張ればいいや、じゃなくて、この1打席に懸ける思いが強くなりました。4割打ったといっても、後半はピッチャーのレベルが高くなって全然打てなかった。自分がもっとレベルアップしなきゃいけないって思いましたね。
ずっと打てていたら『これでいいや』ってなっていたと思うんで、逆に最後の方は打てなくなってよかったです。もっともっと上手くなりたいって気持ちが出てきましたから。小さくまとまる必要はないし、優等生で野球をやる必要はない。ガツガツ行くことが自分にとってもチームにとってもプラスになるんじゃないかな」
外野で熾烈なポジション争いが予想される今季。今までとひと味もふた味も違った乙坂の姿を期待してもよさそうだ。
(佐藤直子 / Naoko Sato)