広島ドラ1入団から8年目、30歳迎える右腕の胸中 丸坊主に見た「気合」
必要とされていないんじゃないか―、やり切れない気持ちに苛まれた2017年
17年は実に不本意なシーズンだった。4月、得意とする巨人戦では幸先良く勝利したものの、好不調の波が激しくローテーションに定着できず。満を持して挑んだ8月の巨人戦では5回途中まで無失点で抑えるも、1球のボール判定で崩れた。試合後、審判への不満とも取られかねない書き込みをSNSでおこない、ネット上が炎上してしまった。
「勘違いを生みかねないことをやってしまった僕の責任ですけどね。でもそれだけあの試合にはかけていた。もちろん他の選手もそうだと思うけど……。何かに当たらないとやっていられないような気持ちだったのも事実です。でも軽率だったと心から反省しています」
結果、シーズン1勝3敗という目に余る成績に終わった。レギュラーシーズン終了後、やりきれない気持ちを隠せない福井がいた。クライマックスシリーズ(CS)ファイナルが台風接近で中止になったその日、福井は広島市内の大野練習場にいた。勝ち進めば日本シリーズもある。多くの選手は宮崎フェニックスリーグへ参加し、課題を持ってプレーしている最中だった。 中には日本シリーズ用の秘密兵器として期待されている選手もいた。
「今後のこと何も言われていないんです。日本シリーズ登板があるかどうかもわからない。ここでの練習はあくまで調整のための調整ですからね。何のために練習しているのか、目標を定めるのさえも難しい」
同じく大野にいたのは、ケガと大病からの復帰を目指す4番打者、鈴木誠也とベテラン赤松真人。鈴木は鋭い打球を打ち返し、赤松は楽しそうにボールを追いかけていた。モチベーションの違いは手に取るようにわかった。
「僕って必要とされていないんじゃないか。戦力構想にすら入っていないんじゃないか。そこまで考えてしまう。やっぱり投手って投げないと何の意味もないんでね。その場所があるのかさえわからないんですから……」
室内練習場の屋根を叩く雨の音に消え入るような小さな声で語ってくれた。