牧田和久が語る変幻自在のストレート 「指先の感覚で回転を変える」
「フライボール革命」にはフライアウトで対抗する
「理想としては人差し指と中指の両方が最後までかかるようにしたい。でも最後は中指にはかかっていない感じで、人差し指もかかってくればキレが出る。やっぱり中指が長いので最後の押し込みが中指になってしまうから、人差し指を大事にする。感覚の部分ですけどね」
「どちらの指も自然に最後までくっ付いているような感じ。あとは意識はしていないけど、下手で投げている分、中指で支えて最後まで投げている部分もある。そのおかげで僕のボールはジャイロ回転っぽくなる。アウトコース低めを少し上を狙って勢いが出るのもそう。だから結果的には中指が最後までかかるのも良い方向へ行っているかもしれない」
近年、MLBでは「フライ打球を打つことが結果につながる」と考えるトレンドがある。いわゆる「フライボール革命」だ。これはプレーの数値化によって出た結論からである。そんな中で牧田は西武時代から意識的にフライアウトで打ち取ることを考えて来た。そういった部分でもMLB強打者との対決は非常に楽しみである。
「打ち損じてフライを打たせたりすることを考えている。フライならフェンスを越えなければ、ほとんどアウトを稼げる。そのために仮に捕手がアウトローとかに構えても、自分で意識的に少し高めにストレートを投げたりもする。そうすることで打者が球の下をコンタクトしてフライに打ち取ることができる」
「でも面白いことに、捕手が最初からハイボールを要求した時は、なかなか走ったストレートが行かなかったりするんですよね(笑)。棒球みたいな感じで高めに行ってしまって危なくなる。でも捕手が低めに要求した時に少し強いボールを投げようと思うと、高めにピュッと伸びるような感じになる。そういうストレートはポンっと打ち上げてくれる。それを自分自身の判断で意識的にやることがある」
NPB時代の17年を例に出すと、58試合62.2回に登板。ゴロアウト率が9.9に対してフライアウト率が6.8に迫る。いかにフライアウト率が高いかも数字上にも現れている。
牧田のストレートは、はたしてMLBの強打者たちの目にはどのように映るのだろうか? フライアウトを稼ぐ秘訣の1つはストレートへのこだわり。そしてもう1つは投球フォームへの大きなこだわりだ。
(山岡則夫 / Norio Yamaoka)
山岡則夫 プロフィール
1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。