全国の進学校への指標に 甲子園夏春出場を決めた公立高校の挑戦

専用グラウンドなし、7限授業にテスト前は練習時間が制限

 秋の県大会までの限られた時間の中で選手の動きを見ていくのだが、昨秋は台風や大雨の影響で公式戦が延期することも多かった。だが、時間のなかった彦根東にとっては恵みの雨となり、県3位として近畿大会に出場し、ベスト8まで進出した。 

 進学校が野球も両立する。いわゆる“文武両道”という言葉は、学生スポーツにおいてよく聞かれる言葉だが、昨夏はその文武両道について様々な意見が飛び交ったこともあった。そもそも、高校生が運動部で打ち込むこと自体が“文武両道”ではないのか。確かにそうではあるが、環境面などを踏まえると状況は少し変わってくる。 

 特に彦根東は専用グラウンドがなく、7限の授業がある日もあり、テスト前は練習時間が制限される。今年の3学期は、まず模試からスタートと定期テスト以外にもテストが多く、机に向かう時間も毎日確保しなくてはならない。つまりは野球と勉強は同じような姿勢で努めなくてはならないのだ。 

「それを“文武同道”と、私は呼んでいます。野球も勉強も、やることは同じ。そして限られな環境の中で、どれだけ効率よくやれるかだと思うんです。特にウチのような公立校は可能性のあることはどんどんやって準備をしておかないと戦っていけない。でも、それがうまくいった時ほど嬉しいことはないですね」(村中監督) 

 2009年に21世紀枠として56年ぶりにセンバツ出場してから、はや9年。昨夏の甲子園に続き今春のセンバツと、力で示して掴んだ甲子園切符は、全国の進学校への指標にもなる。“文武同道”で培った野球が今春のセンバツでどんな花を咲かせるのか――。期待が膨らむ。 

(沢井史 / Fumi Sawai)

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