「代打」でも厚い信頼 日ハムをじんわり変える鶴岡の大きくて温かい存在感
21歳の清水にも大きな影響、栗山監督も「優心にとってプラスになっている」
もちろん何も考えていないはずはない。その言葉の真意は邪念を持たないという意味ではないか。目の前の1球毎に、勝利への最善策を探り、泥臭く実行していく。それは代打でもほかの打席でも、守備でも変わらないのだろう。今季の打撃成績は38打数11安打1打点、打率.289の好成績だ。
先発マスクは21歳の清水優心捕手に譲ることが多いが、試合中はとにかく忙しい。ブルペンでリリーフ陣のボールを受けたり、代打の準備をしたり、後半の守備機会に備えたり。「やることがあった方がいいのかもしれないです。出てなくても試合をしている感じなので」。常にゲームに集中していることが、余計なことを考えずに、代打でスッと打席に入る極意なのかもしれない。
清水の逆転満塁弾に湧いた3日楽天戦の試合後、栗山監督は鶴岡の野球に取り組む姿勢を絶賛していた。「試合を出ようが出まいが、前向きな準備の仕方とか一生懸命な考え方とかいうものが、(清水)優心にとってプラスになっている。そういう意味でも本当にツルに帰ってきてほしかった」と若い清水に与える波及効果にも大いに期待している。
実際、鶴岡は清水にどんな助言を送っているのだろうか。「聞かれたら答える程度ですよ。今は自分の感性を研ぎ澄ませた方がいい。ここはキャッチャーの感性を大事にしてくれる球団だから。まだ大学(なら)4年生。俺が21歳の頃はプロに入ってまだファームでも試合に出てないですよ」と豪快に笑った鶴岡。その大きくて温かい37歳の存在感が、若いチームにじんわりと変化をもたらしている。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)