打者は広島丸、投手はヤクルト小川 セイバー目線で選ぶ6月のセ月間MVP
投手部門はヤクルト勢の争い、ファン投票では守護神・石山が選出されたが…
◯6月月間MVP セ・リーグ投手部門
小川泰弘(東京ヤクルトスワローズ)
登板4 3勝0敗
防御率1.08 FIP1.88 QS率100% 被本塁打0 RSAA 6.73(すべてリーグ1位)
奪三振率7.20 WHIP 1.12 被打率0.260
候補選手は7名。その中でピックアップしたのは、交流戦最高勝率に貢献したこの2投手。
小川泰弘
防1.08 3勝0敗0セーブ 奪三振率7.20 被打率.260
石山泰稚
防2.79 1勝0敗7セーブ 奪三振率10.24 被打率.237
実は石山は候補発表の時点までは8試合5セーブ、防御率0.00と完璧なリリーフを果たしていました。ここまま防御率0を続ければ月間MVPも見えてくるかと思われましたが、24日の巨人戦、29日の阪神戦とセーブはあげたものの、この2試合で自責点3。月間MVP争いから一歩後退したかと思えます。
ちなみに、交流戦最高勝率はヤクルトでしたが、交流戦自体は59勝48敗でパ・リーグが勝利したため、交流戦MVPはパ・リーグの最高勝率のオリックスから吉田正尚が選出されました。しかしヤクルト球団は「ファンが選ぶスワローズ交流戦MVP投票」を企画し、その結果、石山がMVPに選出されています。
ではセイバーメトリクスの視点での評価を見てみましょう。
小川泰弘
防1.08 FIP 1.88 WHIP 1.12 QS率50% K/BB 6.67 RSAA 6.73
内海哲也
防1.88 FIP 2.66 WHIP 0.96 QS率率100% K/BB 4.50 RSAA 4.38
メッセンジャー
防3.67 FIP 2.82 WHIP 1.30 QS率50% K/BB 5.20 RSAA 4.44
内海とメッセンジャーは候補選手には選ばれていませんが、被本塁打が少なく、FIPが2点台ということで紹介しました。しかし両投手ともQS率が50%と先発投手としての役割は果たせていなかったと言えるでしょう。
小川は4試合に先発登板してすべてでQSを達成しました。また楽天生命パーク宮城、神宮、札幌ドーム、東京ドームで登板し、被本塁打が0というのも高評価。そしてRSAA(Runs Saved Above Average)という、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標
(リーグ平均FIP-選手個人のFIP)×投球回数/9
においても、小川の数字はリーグ1位でした。「ファンが選ぶスワローズ交流戦MVP投票」では8位だった小川ですが、こちらで月間MVPに推挙いたします。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。