九州最強の大砲が最後の夏で見せた“野球脳” 「この悔しさはプロの世界で」
昨夏代表・明豊の主砲、浜田太貴が準決勝で敗退
通算45本塁打。「九州最強」とも称された右の大砲・浜田太貴(明豊)の夏が終わった。
「自分が決めてやろうという気持ちが強すぎたのかもしれない」
準決勝の柳ヶ浦戦を4-10で落とした後、浜田は感情の溢れを必死にこらえて唇を噛んだ。昨夏の甲子園で8強に進出し、今春の九州大会でも準優勝。ベスト8入りした昨秋の九州大会を含め、これらの大舞台すべてで本塁打を放つなど抜群の勝負強さを誇ったが、柳ヶ浦戦は3打数1安打1四球。今夏の大分大会では本塁打ゼロに終わった。
初戦の大分工戦が4打数1安打1打点。3回戦の大分商戦が4打数2安打3打点、準々決勝の日田林工戦が4打数無安打。3本塁打11打点と大暴れした昨年の大分大会に比べて物足りなさが残ったに違いない。
明豊は初戦で決勝打を放った副主将の清水翔吾が、その試合中に左手小指を脱臼。昨夏の甲子園メンバーでもある主将の管大和も2戦目に口内を9針縫う大怪我を負い、準々決勝ではスタメンを回避せざるを得なかった。満身創痍のトーナメントとなった中、清水とともに副主将を務める浜田に掛かる負担も、当然のように増していく。
一方、対戦チームからの徹底したマークにいら立ちもあった。侍ジャパンU-18日本代表の1次候補にも名を連ねる強打者だけに、ストライクゾーンで勝負してくる投手は皆無といってよく、配球は自ずと外角中心に。4試合で6四球を選んだが、時折甘く入ってくる内角球を力んで仕留め損ねる場面もあった。
ただし、課題とされた守備では定位置後方に飛んだ大飛球のランニングキャッチや、右前打で三進を狙った一塁走者をストライク返球で刺す鉄砲肩を披露するなど、高校生水準を上回る能力を発揮。この場面は試合展開上、走者を溜めたくないところで、浜田はあえて深めにポジションを取った。一塁走者に三塁を狙わせるためにだ。また、大会2盗塁を含め塁上でも冷静な走塁判断が光り、打撃以外でも「野球脳」の高さを充分に見せつけている。
試合後「この悔しさはプロの世界で晴らすしかありません。監督さんにも野球で味わった悔しさは野球で晴らせと言われているので」と、初めてプロ志望を公言した。2年連続の甲子園は逃したものの、打者としての非凡さと高校生活2年半で放った輝きは、決して色褪せるわけではない。
(加来慶祐 / Keisuke Kaku)