報徳学園が8年ぶり聖地 涙の夏から1年、名門の重圧に打ち勝った“新米監督”
昨夏は準決勝で神戸国際大付に敗れナインの前で涙
第100回全国高校野球選手権記念大会は28日、東兵庫大会の決勝が行われ、報徳学園が2-0で市尼崎を下して8年ぶり15回目の甲子園出場を決めた。昨春に選抜ベスト4入りした後から指揮を執る大角健二監督は、指揮官として自身初の甲子園に向け「全員野球を実戦してハツラツと報徳らしい全力疾走で頑張りたいと思います」と口にした。
名将・永田裕治前監督の後を任された“新米監督”にとっては苦難の1年が続いた。ドラフト候補にも挙げられる小園海斗など力のある選手を抱えながらもチームは昨夏、そして今春と2季連続で甲子園出場を逃した。春11回、夏7回の出場を果たした恩師の背中は大きく見えた。
甲子園を逃すことでOB、周囲から嫌でも“雑音”は聞こえてきたが、指揮官の信念は変わらなかった。永田前監督の“全員野球”を継承しながら、守備では逆シングル、ジャンピングスローといった大胆なプレーを選手たちに求め、過去の伝統に新たな色を加えたチームを作り上げた。
練習では気持ちの見えないミスがあると容赦ない怒号が響き渡るほど、熱血かつ厳しい指導は部長、コーチ時代から変わらないが、ユニホームを脱げば生徒思いの教師の顔に戻る。今夏の予選でも教え子たちの顔を見るや否や自ら駆け寄り「ありがとう。次も大応援団で頼んだ! ホンマにありがとう」と握手を求める姿が印象的だった。
昨夏の準決勝で神戸国際大付に敗れた後には「この夏をステップアップの材料にするつもりはなかった。全て俺の責任。君たちは強いのに監督の差で負けた」とナインの前で涙を流した。あれから1年。涙は笑顔に変わった。悔しさ、歯がゆさを味わいながら全てを懸けリベンジに成功し、悲願の甲子園出場を掴んだ。
「目標、夢とかそういう言葉では片づけられない使命という形で大きく私の背中に乗っかってましたのでホッとしています」
名門の重圧を打ち破り、8年ぶりの聖地を手にした新生・報徳学園。大角監督の戦いはまだ始まったばかり。ドラフト1位候補・小園海斗にも注目が集まるが、大角監督の甲子園初采配にも注目だ。
(橋本健吾 / Kengo Hashimoto)