「原点」「聖地」―島根の高校野球を見守る松江市営野球場と県立浜山公園野球場

打者は浜山、投手は松江で活躍した二刀流・白根

 高校時代、その体型(当時は100キロ以上体重があった)からついた名前は「島根のジャイアン」。「4番・投手」として2年春夏、3年夏に甲子園出場。3年夏の予選では3本塁打、甲子園でも山口・柳井学園相手に3安打完封勝利を挙げた。

「浜山は打撃、松江は投手での印象が強い。大谷(翔平)君ではないですけど、僕も投手としてのプロ入りを目指していた。だから高校時代はどちらかといえば投手の練習が主だった。その中で松江では結構、しっかり抑えた印象が残っている。逆に浜山は長打、本塁打を打った印象。まぁ、どちらも球場は広くなかったので、金属バットならしっかりとらえればフェンスを越えた。松江と浜山を比べると、浜山の方が良い場面でも打った印象が残っている」

 当時は二刀流選手としてチームの中心だった白根。松江と浜山に異なった印象を持っているのが面白い。しかし聖地はやはり松江だという。

「学校が松江にあったのもあるけど、島根の聖地はやはり松江だと思う。浜山って僕がやっていた頃は更衣室もなかったですからね。試合直前まで球場外の駐車場で待機していた。そういう意味では松江の方が施設はしっかりしていた」

 地元ローカル放送の山陰放送で20年以上、高校野球の実況をおこなっている山根伸志さん。取材者の立場から見続けている松江と浜山の違いについて語ってくれた。

「山陰放送は島根、鳥取両大会の準決勝以降は中継しています。タイミングによってラジオ、テレビのどちらかをやっています。個人的には、情景描写など、細かい部分を短時間で伝えないといけないラジオが好きですね。テレビも同じですがしゃべりすぎてもいけない、でもしっかり取材したことなど伝えたい。緊張感があります」

「施設でいうとやはり松江の方が充実している。土に関しては、松江の方が雨に強いという印象ですね。でも浜山も好きです。緑の中の浜山はレフト方向へいつも風が吹いていて、それが影響する時もある。またフィールドが近く、構造上、応援席がベンチ真上にある。臨場感では浜山ですね」

「僕の夢は甲子園で山陰のチームが強豪校とやる試合を生実況すること。甲子園には我々、地方の放送局でも使用できる放送ブースがある。でも使用料もかかるのでコストがかかるリスクは避けなければならない。強豪校相手に互角に戦えるくらい、注目されればそれも可能になる。いつかやってみたい夢ですね」

 また、最後に白根は「全国に出てレベルの差はそこまで感じなかった。でも試合慣れしているとは思った。島根は出場校も少なく、5回勝てば甲子園出場ですからね。試合を多くやっているチームの経験値みたいなのは感じました。でもやれないことはない。プロ選手も多く出しているし、島根のチームだってやれる」と島根の後輩たちに向かって語りかけてくれた。

 はじまりと終わりの場所。歓喜と無情が同居する場所でもある。勝ち進んだ選手たちにはスタートライン。そしてそれ以外にはフィニッシュライン。島根県にとっての松江や浜山のような球場は、どの県にも同じように存在する。しかし、そこで見上げた同じ空は甲子園につながっている。

 夏100回目、そして平成最後の夏。まもなく始まる甲子園ではどのような戦いが見られるのか。参加する誰もが、ゲームセットのその瞬間まで「All or Nothing」。怖いもの知らずに、最後まで周りを気にせず可能性を追い求めてほしい。多くの野球人にとって、またこの熱い季節がやってくる。

(山岡則夫 / Norio Yamaoka)

山岡則夫 プロフィール
 1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌Ballpark Time!を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、製作するほか、多くの雑誌やホームページに寄稿している。最新刊は「岩隈久志のピッチングバイブル」、「躍進する広島カープを支える選手たち」(株式会社舵社)。Ballpark Time!オフィシャルページ(http://www.ballparktime.com)にて取材日記を定期的に更新中。

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