打者は山田哲人、投手はジョンソン セイバー目線で選ぶ7月のセ月間MVP
月間4勝、セイバーメトリクス数値も優秀なジョンソンが最右翼
さて、7月のセ・リーグ投手成績をセイバーメトリクスの視点で評価してみましょう。
ジョンソン(広島)
防御率2.03 FIP 2.11 WHIP 1.13
QS率75% 奪三振率9.11 RSAA 5.57
小川泰弘(ヤクルト)
防御率1.69 FIP 2.92 WHIP 1.09
QS率100% 奪三振率6.08 RSAA 3.46
小笠原慎之介(中日)
防御率1.71 FIP 4.49 WHIP 1.22
QS率50% 奪三振率6.49 RSAA -1.46
ガルシア(中日)
防御率1.93 FIP 3.12 WHIP 0.96
QS率75% 奪三振率7.39 RSAA 2.70
7月は防御率1点台が3人います。その中でも小笠原慎之介(中日)は日本人投手で唯一月間MVP候補に挙がっている選手なのですが、セイバーの指標ではそこまで芳しいものではありません。与四死球16、被本塁打2とFIPを構成する2要素がかなり悪い成績になっています。WHIPも1.22と凡庸なのですが、7月のLOB%(残塁率)が89.7%と高い数値となっています。ランナーは許すものの後続を断って得点を与えていない様子が伺えます。
6月の月間MVPに推挙した小川泰弘(ヤクルト)は7月も4試合に先発登板してすべてでQSを達成しています。これで8連続QS達成です。ただ7月の援護率が1.86と打線の援護に恵まれず1勝止まりでした。
ガルシアは7月18日の広島戦で自身初となるシーズン10勝を8回1安打無失点で達成。また7月31日の阪神でも勝利し11勝目。ナゴヤドームで9勝、東京ドームで1勝とドーム球場で圧倒的な勝ちを稼いでいます。
防御率1点台の3人の投手を抑えて7月のセ・リーグ投手部門MVPには、打線の援護にも恵まれましたが、月間4勝、被本塁打0、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す指標RSAAが5.57と広島の月間首位、そしてリーグ制覇への足固めに貢献する安定のピッチングを披露したジョンソンを推挙します。
鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。近著に『統計学が見つけた野球の真理』(講談社ブルーバックス)『世の中は奇跡であふれている』(WAVE出版)がある。