元メジャー右腕も感心する金足農・吉田の野球脳 「高校生離れしている」

元阪神でメジャーでもプレーした藪恵壹氏【写真:岩本健吾】
元阪神でメジャーでもプレーした藪恵壹氏【写真:岩本健吾】

4試合で合計615球「将来がある投手だからこそ、無理がないように」

 第100回全国高等学校野球選手権記念大会第14日は、準々決勝4試合が行われた。第1試合こそ大阪桐蔭(北大阪)が浦和学院(南埼玉)を11-2の大差で下したが、残り3試合はすべて3-2のスコアで勝敗が決定。済美(愛媛)、日大三(西東京)、金足農(秋田)がベスト4に駒を進めた。

 第4試合では、金足農が敗戦色濃厚だった9回裏に無死満塁から2ランスクイズを決め、近江(滋賀)に劇的な逆転サヨナラ勝ちを収めた。3回戦の横浜戦に続くミラクル勝利に、元阪神でメジャー右腕の藪恵壹氏は「今日はさすがにやられた、と思いましたけどね」と驚嘆の声を上げた。

 3回戦まで3戦連続150球超えだった吉田輝星投手が、この日も力投を見せた。藪氏は3試合通算で475球を投げ、この日連投となった右腕について懸念していたが、「1試合を1人で投げきらなければいけないと自覚しているのでしょう。序盤から変化球を多めに投げながら、上手く調整していましたね」と感心。この一戦は「4番・北村(恵吾)君との対決が見応えがありましたね」と振り返る。

 一番の見どころは、6回表、1死三塁で迎えた北村の第3打席だ。ファウルと見逃しで早々に追い込んだ吉田だが、2度のファウルなどで粘られた6球目140キロ速球を三遊間を破る左翼へのタイムリーとされた。この日まで3試合で11打点を挙げていた北村に対し、吉田は一歩も譲らぬ真っ向勝負で挑んだ。見る者を惹きつける全4打席の攻防だったが、藪氏はこの日を通じて北村有利だったと見る。

「今日は北村君がいい振りをしていました。あのタイムリーは見事でしたね。2打席目のライトフライもいい当たりだったし、吉田君が投げ勝ったのは8回に投手ゴロに打ち取った4打席目だけだった感じがしました」

 だが、最後に笑ったのは吉田だった。最終的には9回裏の2ランスクイズが勝敗を決したが、勝機を呼び込んだのは、どんな状況でもマウンド上で冷静さを失わなかった「吉田君の高校生離れした落ち着きですね」と指摘する。

「吉田君はバント処理も上手いし、走者を背負った場面も決して舞い上がることがない。例えば、8回無死一、二塁の場面で近江の土田君はバスターで打ってきましたが、打球を捕った吉田君は慌てず三塁ベースカバーに入るのを見てアウトにした。6回に1点を勝ち越された後も、1死一塁で打ち上がったバントをわざと落としてゲッツーに仕留めてみせました。甲子園という舞台で、あれだけ落ち着いていられるのはすごいですよ。

 ピッチングもチェンジアップとフォークを上手く使っていましたね。北村君の第4打席、2球目に内角へフォークを投げた。あの1球があったから、3球目の外角スライダーを振らせてゴロに打ち取れましたから。右バッターの懐にあの球を投げられるのは見事です」

17年ぶり4強入りを逃した近江は「9回によそいきの野球になっていた」

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