評価上昇中の金足農・吉田は「即戦力」 育成のプロが感服した「すごい能力」
「吉田君はいろいろなものが高いレベルで完成されている投手」
「2-0という不利なカウントになったとき、プロにも『原点能力』を要求します。『原点』とは、外角低めへのボールです。その『原点能力』をどう身につけるかというのは、プロの投手にとって大きな課題になります。なぜ『原点』かというと、バッターが打ってきても間違いが小さくなるようにです。
吉田君は、結果から見て『ど真ん中は打ってこない』と思っていたのでしょう。そういう勘なのか、確信なのか。あのど真ん中の2球はしびれました。これまでも、終盤にアウトコースへのボールで最速を出すとか、この投手の能力にはこれだけのものがある、というのは感じていました。凄いボールがあって、メリハリがきいて、と。そういう評価でした。ただ、今日の8、9回のあの2球を見たときに、もっとすごい能力を感じました。
最高のピッチャーとしての評価ができる。プロ野球に入ったとしても即戦力として十分に期待できる。スタミナもあるし、変化球の種類も多い。1年目からローテーションでやっていける能力がある。それにプラスして勝てるピッチャーです。球数が増えてきたら牽制をきちっと入れて間を作るといった能力もあります。例えば、もっと真っ直ぐの速い投手はいます。ただ、吉田君はいろいろなものが高いレベルで完成されている投手。打たれ強いし、精神的にも強く、エラーしても動揺する素振りも見せない。久しぶりに見る好投手です」
松井氏はさらに、吉田の「野球脳」の高さも高く評価する。これも8回の場面。大塚の適時打で1点差に迫られ、2死一、二塁で打席には左打者の中村。2球で追い込んだバッテリーは、真っ直ぐでファウルの後、最後は落ちるボールで空振り三振に仕留めている。
「日大三は左打者が吉田君の攻略に対する研究の跡が見えて、もし逆転する可能性があるなら、5番の中村君のところにどういう形でランナーを置いていくかだと考えていました。ところが、吉田君は7回に6番からをビシッと3者凡退に切った。これで走者を置いて中村君に回るのは難しいかなと思ったのですが、8回にチャンスで回ってきました。
4回には外に投げておけば打たれないという中で中村君にレフト前に運ばれましたが、7回は落ちるボールで三振を取りました。吉田君は今大会ここまで追い込んでから外の真っ直ぐで三振を取ってきましたが、中村君は全部ついてきていた。バッテリーは中村君が嫌だったと思います。そこで見切って、最後に勝負球で落ちるボール。バッテリー、吉田君は前後のバッターや前の打席などの情報が全部頭に入っているのだろうと感じました」