ホークス高谷が持つベテラン捕手の“読み” 通算100勝の中田に見せた気遣い

ソフトバンク・高谷裕亮【写真:藤浦一都】
ソフトバンク・高谷裕亮【写真:藤浦一都】

「勝ったら中田の100勝目」とミットに忍ばせたボール

■ソフトバンク 12-8 西武(26日・ヤフオクドーム)

 26日の西武戦でプロ通算100勝を達成したソフトバンク中田賢一投手。サヨナラ本塁打での達成のため、ウイニングボールはライトスタンドのファンが手にしたままだ。しかし、高谷裕亮の予知能力的なひらめきで、中田はもう1つの記念球を手にすることができた。

 ライトスタンドに消えた100勝目のウイニングボール。お立ち台から戻った囲み取材で中田は「高谷(裕亮)さんが(12回表の)最後に秋山を三振に取ったボールをくれたので、それを代わりに持って帰ります」と語っていた。

 そこで帰路につく高谷に話を聞いてみた。

「秋山を三振に取って、いつものようにボールボーイにボールを投げたんですけど、その時にふと思ったんです。『ひょっとしたら勝つかもしれない。その時は中田の100勝目になる』って。すぐにもう一度ボールを受け取ってベンチで自分のミットに入れておきました」

 その裏、グラシアルのサヨナラ満塁弾で試合は決着。高谷は自分のミットに忍ばせたボールを中田に手渡した。もしもグラシアルの打球が犠飛やヒットであれば、本当のウイニングボールが中田の手元に渡ったかもしれない。その時は高谷がボールボーイにボールを返せばいいだけのことだ。しかし、実際にはサヨナラ本塁打となり、高谷の気遣いが中田を喜ばせる結果となった。

 代わりの記念球とはいえ、11回からの2イニングを無失点で抑えたからこそのサヨナラ勝ち。特に終盤は試合の流れが西武に傾いていただけに、その流れを食い止めた中田のピッチングは大きな価値がある。12回の3者連続三振の締めとなったボールは、グラシアルがライトスタンドに飛ばしたボールと同等の“もう1つの記念球”と言っていいだろう。

 高谷に本物の予知能力があったわけではないだろうが、ベテラン捕手ならではの“読み”と優しさに大きな拍手を贈りたい。

(藤浦一都 / Kazuto Fujiura)

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