ロッテ福浦、偉業達成まで残り8本 幕張の安打製造機が見せた厳しさ、信念とは
後輩を想う気持ち。そして厳しさ、信念が感じられた瞬間
福浦の勝利への信念を強く感じられた場面が2015年にもう一つあった。8月30日のオリックス戦(現ZOZOマリンスタジアム)。5-2と3点リードの6回の守り。無死一、二塁。相手打者がバントをした打球を捕手の田村龍弘捕手がつかみ、積極的に三塁へスロー。これが左に逸れ、あわや暴投だったが、三塁手がうまく体を伸ばし捕球したことで間一髪アウトとなった。この直後だった。田村が表情を一瞬、緩めたのを、一塁を守っていたベテランは見逃さなかった。鬼の形相を見せ、喝を入れた。
「一生懸命やって、エラーをすることもあるし、結果が出ない事もある。それは仕方がないこと。ただ、あの時はニヤッとしていたのが見えた。プロは周りから見られている。どんな場面でも、試合中にあの表情はしてはいけない。ちょっとしたことかもしれないけど、プロはそういう油断はダメ。一つアウトにしたとはいえピンチはなお続いていた。そういうところを付け込まれたりする世界」
この試合は5対4で勝利した。試合後のロッカー。福浦と田村が2人で話し込む姿が見られた。試合中の鬼気迫る表情から一変、今度は優しく話しかけていた。普段から打撃やウェートのアドバイスをするなど、誰よりも田村を可愛がってきた。期待をしているからこそ、分かってほしかった。自身が培ってきたプロの哲学、厳しさを切々と教えているように見えた。
そんなプロフェッショナルな男の2000本安打がいよいよ近付いている。もう間もなくマリーンズファンの誰もが待ち焦がれた歴史的な瞬間が現実の事として訪れる。それでもやはり本人はブレることがない。
「ファンの方の想いは痛いほど伝わってくる。だけど、オレはチームの勝利のために打席に立つだけ。10本を切ったとかということを意識する事もなければ、感慨もないよ」
いつも冷静。そして黙々とチームの勝利のために、何ができるかだけを考え、日々を過ごしている。だから自身の個人記録を、それがたとえ大偉業へのカウントダウンであっても振り返る事も、感慨に浸る事もしない。そんな献身的な背中にこそ、ファンも関係者も後輩たちも、誰もが強く偉業達成を願う。シーズンは残り31試合。2000本安打まで、あと8本。チームの勝利と共に安打を重ねる。
(マリーンズ球団広報 梶原紀章)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)