米で「解説者」→「監督」への転身が増える理由、現場経験より大切なもの
頭脳とベースボールマインドの両方を持つ若い球団トップも台頭
さらには、監督が発する一言一言が注視される時代だ。メディアの厳しい目だけではなく、ソーシャルメディアでも大きく取り上げられる。不適切な発言が1つでもあれば大きな問題に発展し、チームのブランドイメージを損なう事態にもなってしまう。球団側も世論に対する対応は早く、今季は公の場でなかったにも関わらず不適切な発言をしたため仕事を失ったコーチもいたほどだ。そういう意味では、常に生放送というやり直しの利かない仕事を経験し、発言には人一倍気を遣う解説者を務めた人物は、球団側も不安が少ないはずだ。
そして、最後の理由として挙げたいのは、GMや野球運営責任者が求めるリーダー像が変わってきている点だろう。米球界には、アイビーリーグと呼ばれる東海岸に位置する名門私立大学8校の出身者は増えてきている。半数近くの球団トップが、今ではアイビーリーグ出身者だ。だが、彼らは頭脳派として優秀なだけではなく、さまざまな形で球団やMLB機構での仕事やインターンを経験していることが多い。ベースボールマインドを持ち合わせているからこそ、世界で30しか存在しないイスの1つに座ることができたのだろう。20代後半や30代前半でGMに抜擢される人材が増え、大きな権限が与えられる今、彼らが直接選ぶ監督も若返ってきているのだろう。
一方で長年監督を続けている存在もリーグには健在だ。ボルチモア・オリオールズのバック・ショーウォルター監督であったり、サンフランシスコ・ジャイアンツのブルース・ボーチー監督であったり、そして19年以上同一チームで指揮を執っているロザンゼルス・エンゼルスのマイク・ソーシア監督であったり。それでも名将、オールドスクールという代名詞が似合う監督は年々減っている印象だ。
チームがどういう状況に置かれているかによって、そこにマッチする特徴を持ち合わせた監督をGMが選ぶ。筆者は複数のメジャー球団で働き、さまざまな指揮官と出会うことがあったが、勝つことを求められているか、再建中であるかによって、その人選は変わっていたように思う。だが、常に優勝が求められている2球団が新たな指揮官として解説者を経験している2人を選び、結果につながっていることは、今後においても新たなトレンドとなっていくかもしれない。
(「パ・リーグ インサイト」編集部)
(記事提供:パ・リーグ インサイト)