「カーブ」と「魂」 3大会連続MVP、侍J女子代表・里を支えた2つの進化
里を支えた木戸克彦コーチの言葉「もっとボールに気持ちを込めるように言われた」
10年から5大会連続で代表入りしている里が毎回目指しているのは、決勝のマウンドに上がり、チームに貢献して、優勝すること。そのために2年間を過ごしている。
今大会は2つの大きな進化があった。一つは投球スタイルだ。前回までは直球とスライダーで力に頼っていたが、16年大会後に新たにカーブを習得。今大会は、冷静に打者の打ち気を感じ取り、勇気を持って緩いボールを使いこなした。
もう一つの進化は、阪神から派遣された木戸克彦ヘッドコーチの言葉がきっかけだった。「(7月末の)新潟合宿で、レベルは上がってきているけれど、計算し過ぎて淡々と投げている。もう一つレベルを上げるためには、『引っ掛けろ』とか『振ってくれ』とかもっとボールに気持ちを込めるように言われました。今大会それができたことは成長かなと思います」。1球1球、丁寧に魂を込め、1アウトを取る毎にベンチの仲間とも声を掛け合った。そんなエースの姿が、平均年齢21歳と若い選手を鼓舞し、チーム全体をも成長させた。
年々、他国の打者のレベルは上がっている。「振ってくるバッターが増えて、ホームランも増えている。一発を警戒しながら丁寧に投げました」と話す。世界のレベルが上がることは大歓迎だ。「自分も負けずに『里はすごい』と言ってもらえるように、さらなる高みを目指したいです」とモチベーションにする。31歳で迎える2年後には、一体どんな進化を見せるのか、今から楽しみだ。
(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)